印象的だったセッションとして、WGSの副会長も務めるUAEのAI大臣オマル・スルタン・アルオラマと、オープンAIのサム・アルトマンCEO(ビデオ出演)の対談を挙げる。
27歳で現職に就任したアルオラマは、現在34歳。その若きリーダーが「相当な数の聴衆を前に、他国の天才の意見に賛同し、政治的な宣言をしてしまうというスピード感」に驚いたという。また、各国首脳も集うイベントを30代が担うというところにも、「この国の性格が出ている」と黒川。
「日本では30代の社長は若いと見られがちですが、ドバイではもっと若い人たちが活躍しています。時代の動きに敏感な世代が頭を使ってアイデアを出し、年配の方が金銭面も含めサポートする。そんな構図に見えます」
例えば、UAEでは投票もパスポートの更新もオンラインで完結する。日本でこうしたデジタルインフラへの転換は遅く、情報漏洩やコストなどが批判されがちだが、現地の人は「政府を信頼しているから」と歓迎していたという。上位下達の中央集権型だが、意思決定が一本化されているのは強さでもある。
「急速に開発される街は“はりぼて”にも映りますが、一貫性があるという見方もできます。圧倒的なリーダーシップで決定し、物事を進めています」
各所に通じる「マジュリス」の精神
黒川が最初にドバイを訪れたのは、日本でもその名が知られ始めた2008年のこと。トランジットで数日の滞在だった。虎屋に就職後には、貿易会社を営む妻の父親の会社で研修するため、サウジアラビアやドバイに数カ月駐在。近年は、「とらやパリ店」への出張の際にドバイを経由することもあったが、「新しくつくられた街より、文化的な街のほうが好き」で、そこまで興味をもってはいなかった。見方が変わったのは、1年ほど前に現地の同世代とつながったことが大きい。産業が確立する前からその地に住み、ファミリービジネスの傍ら中東文化を世界に発信する人、大きく事業を展開する人たちとドバイや東京で時間を過ごし、「日本人以上に日本の文化に詳しい」彼らにも感銘を受けた。