経済・社会

2024.07.18 16:30

焚き火、サミット、フリーゾーン。虎屋社長が見たドバイの「活力の源泉」

サミット全体のトーンとして、「利益を超えて、サステナブルな未来のために何をしていくべきかに参加者の意識が向いているのを感じた」という。そこは、登壇者の意思表示の場であると同時に、参加者がつながる場でもあり、日本の家族経営を率いる黒川らに“ファミリービジネス”を軸としたラウンドテーブルやディナーもセットされていた。
 
印象的だったセッションとして、WGSの副会長も務めるUAEのAI大臣オマル・スルタン・アルオラマと、オープンAIのサム・アルトマンCEO(ビデオ出演)の対談を挙げる。
2日目にはオープンAIのCEOサム・アルトマンがビデオ登壇。

2日目にはオープンAIのCEOサム・アルトマンがビデオ登壇。

27歳で現職に就任したアルオラマは、現在34歳。その若きリーダーが「相当な数の聴衆を前に、他国の天才の意見に賛同し、政治的な宣言をしてしまうというスピード感」に驚いたという。また、各国首脳も集うイベントを30代が担うというところにも、「この国の性格が出ている」と黒川。

「日本では30代の社長は若いと見られがちですが、ドバイではもっと若い人たちが活躍しています。時代の動きに敏感な世代が頭を使ってアイデアを出し、年配の方が金銭面も含めサポートする。そんな構図に見えます」

例えば、UAEでは投票もパスポートの更新もオンラインで完結する。日本でこうしたデジタルインフラへの転換は遅く、情報漏洩やコストなどが批判されがちだが、現地の人は「政府を信頼しているから」と歓迎していたという。上位下達の中央集権型だが、意思決定が一本化されているのは強さでもある。

「急速に開発される街は“はりぼて”にも映りますが、一貫性があるという見方もできます。圧倒的なリーダーシップで決定し、物事を進めています」
サミット会場に隣接するホテル。この一帯はプライベートビーチもあるリゾートだった。

サミット会場に隣接するホテル。この一帯はプライベートビーチもあるリゾートだった。

各所に通じる「マジュリス」の精神

黒川が最初にドバイを訪れたのは、日本でもその名が知られ始めた2008年のこと。トランジットで数日の滞在だった。虎屋に就職後には、貿易会社を営む妻の父親の会社で研修するため、サウジアラビアやドバイに数カ月駐在。近年は、「とらやパリ店」への出張の際にドバイを経由することもあったが、「新しくつくられた街より、文化的な街のほうが好き」で、そこまで興味をもってはいなかった。

見方が変わったのは、1年ほど前に現地の同世代とつながったことが大きい。産業が確立する前からその地に住み、ファミリービジネスの傍ら中東文化を世界に発信する人、大きく事業を展開する人たちとドバイや東京で時間を過ごし、「日本人以上に日本の文化に詳しい」彼らにも感銘を受けた。
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文=鈴木奈央 写真=黒川光晴

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年7月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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