ただし教授は、今回問題となっている金属片がISSから放出された事実が、問題を複雑にする可能性があるとも指摘した。ISSは米国、ロシア、欧州11カ国、日本、カナダが参加する国際パートナーシップを通じて建設・管理されており、各パートナー間で国際条約に基づいて賠償責任と請求の防御について協議することが定められている。
時代遅れの宇宙法
ニューマン教授は、宇宙に関する法律は「宇宙活動が排他的で高価なビジネスであった時代には十分な内容だった」と言う。これらの法律が実際に発動されることはあまりなく、1980年代にソビエト連邦の衛星がカナダ上空で燃え尽きた後、ソ連がカナダに賠償金を支払った事例がある程度だった。だが、ここ数年、宇宙へのアクセスや宇宙へ送られる機器の製造コストが安価になり、その結果ますます多くの物体が軌道上に投入されるようになっている。宇宙ゴミは、人類が宇宙に進出するのを妨げ、すでに宇宙にある物体を脅かし、地上にとっても脅威となっている。2022年の研究結果では、今後10年間で制御不能になったロケットが地球に落下し、10人に1人の確立で死傷者が出ると推計している。
「この事実は、宇宙活動を管理する現行の規制・法制度のあらゆる側面に負荷をかけている。それは人間の活動範囲が大幅に狭かった時代に制定されたものだからだ」とニューマン教授は述べ、賠償請求に対処して法律を執行するために必要な制度やプロセスも欠けていると指摘した。
とはいえ、ハリントン准教授は「宇宙ゴミが地球に落下して損害を与えるという問題は、大局的に見ればかなり限定的でリスクも低い」と指摘し、ニューマン教授もこれに同意した。
「宇宙ゴミに関するより大きな問題は、地球低軌道にどれだけ多くのデブリが蓄積されているかだ。それがデブリ同士の衝突や、それに伴う連鎖的なデブリの急増を引き起こし、宇宙での安全な活動をより困難なものにしている」とハリントン准教授は述べている。「大きな問題の一つは、現在軌道上に存在するデブリの多くを除去するのは経済的に実現可能でないという点だ。したがって、現在の取り組みのほとんどは新たなデブリの発生軽減に焦点が当てられている」
NASAによると、2022年1月時点で地球軌道上に存在するデブリの量は、少なくとも9000トンに上っていた。この質量を構成する物体のうち2万5000個以上が直径10cm以上で、直径1~10cmの物体は推定50万個にもなるという。また、直径1mm以上のデブリは1億個以上あるとされる。
(forbes.com 原文)