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2024.06.30 09:00

売り上げは力、利益は品質。100億円を突破したキャニコム社長が考えていること

包行良光|筑水キャニコム代表取締役社長

Forbes JAPAN 2024年8月号は10周年特別記念号。特集テーマは、「THE NEXT IMPACT THING 『次のインパクト』はこれだ」だ。大転換期を迎える日本経済に「次のインパクト」をもたらすのは、間違いなく次世代の人々が持つ起業家精神だ。『Forbes JAPAN』では、これからも物事をまるで違う目で見る人たちの壮大なビジョンと挑戦に敬意を払い、世界を変える人々の姿を伝え続けたい。

2年前に、小さくても価値の大きな企業に光を当てるスモール・ジャイアンツ アワードのグランプリを獲得した農業機械メーカーの筑水キャニコム。海外の売り上げ比率は57%を超え、昨年12月期には売上高100億円を突破した。飛躍を続けるために、包行社長が描いた海外戦略の本質とは何か。


農業や林業、土木建設の小型運搬車などを開発・製造する筑水キャニコムは、2023年12月期で売上高100億5000万円を計上した。前年の87億7000万円から一気に売り上げを伸ばした原動力は海外戦略にある。23年は、国内売り上げが前期比6.4%増だったのに対し、海外売り上げは21.6%増。海外の売上比率は57%になり、成長スピードだけでなく規模でも海外が国内を上回っている。
 
国内市場が成熟するなかで、すでに海外進出している中小企業は少なくない。ただ、同じように海外に活路を求めても、海外事業が伸び悩んでいる企業は多い。なぜキャニコムは海外で売り上げを伸ばせたのか。代表取締役社長の包行良光は次のように自己分析する。

「海外の国や地域ごとにニーズが違います。例えば同じ車種でも、北欧は重いブーツで作業するからペダルを厚くしたほうがいいし、逆に東南アジアはビーチサンダルだから軽くていい。現地のニーズを丁寧に拾って柔軟に対応してきたから受け入れられた」
 
海外事業の直近の急成長も、市場ごとの戦略策定の賜物といえる。アメリカ市場では、インフラのメンテナンス需要の高まりを見越して、「コンクリート砂男」など建設現場用の運搬車を強化して売り上げを伸ばした。今年3月にボルティモアでコンテナ船が橋に衝突して崩落した事故が発生したときは、全米4万橋の修繕率を調査。予算が下りそうな州を重点的に攻めるというきめ細かさを見せている。
 
アジアでは、長年取り組んでいるパーム農園向けのほか、近年はドリアン農園もターゲットにしている。というのも、中国で空前のドリアンブームが起きているからだ。中国税関統計によると、23年、中国のドリアン輸入量は前年比72.9%増の142万5923トンに。このブームに目をつけたタイやベトナムでは、コーヒー畑からドリアンに転作する農家が相次いでいるのだ。

「ドリアン栽培は、雨季の間の短い晴れ間に急いで草を刈らなくてはいけません。競合製品に比べて速度が速い『草刈機まさお』は、そのニーズにぴったり。コーヒーからドリアンへの転作は2〜3年かかります。少し前からドリアンに特化した代理店に卸し始めていましたが、それがようやく実を結び始めました」
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文=村上 敬 写真=帆足宗洋(AVGVST)

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年8月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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