サイエンス

2024.06.23 14:00

インドの「4大毒ヘビ」 死なないための5つのアドバイス

2. 医療へのアクセスが依然として劣悪

インドの医療システムはこの20~30年間に大きく改善し、特に大都市では設備の充実した病院や迅速な緊急対応システムが整備された。けれども、こうした発展は全土で均一に進んではいない。

農村部や遠隔地では医療施設の数が少なく、毒ヘビ咬傷などの緊急事態に対応できる設備も不足している。そして、ビッグ・フォーの咬傷の大部分が発生し、人口の大部分が居住するのは、まさにこうした地域だ。

このように地域間の医療格差が大きいため、咬傷が起きた際に、すぐに血清投与などの効果的な治療を受けられる保証はない。毒ヘビ咬傷直後の生死を分ける数時間が、遠く離れた医療施設への搬送に費やされることも珍しくない。この間に毒の作用が増大し、症状の重篤化や死亡のリスクが高まる。

加えて、血清にも問題がある。インドではビッグ・フォーの毒を中和する多価血清が生産されているものの、その効果はしばしば疑わしいものであることが研究で明らかになっているのだ。

3. 文化に根付いた迷信と、意識啓発の欠如

ビッグ・フォーの毒の作用は極めて深刻だ。たとえば、ラッセルクサリヘビの毒は重篤な血液凝固障害を引き起こし、大量出血につながる(血管内で凝固因子が大量に消費されることにより、止血ができなくなる)。

また、インドアマガサヘビの毒は麻痺を引き起こし、患者は呼吸困難に陥ることがある。こうした症状は、迅速に的確な治療を施さなければ、すぐに致死的なレベルに悪化しかねない。

問題は、インドの多くのコミュニティーでは、毒ヘビ咬傷に関して文化に根付いた迷信や誤った伝統的知識が蔓延していることだ。インドの一部では、ヘビは神聖な動物とされている。

文化的・社会的通念に根づいた応急処置や治療薬には、効果がないどころか、状況を悪化させかねないものさえある。止血帯の使用、咬傷部位の切開、薬草の投与は、患者が本当に必要な治療を受けるのを遅らせる可能性がある。

その上、こうした伝統医療は地域文化に深く根ざしているため、毒ヘビ咬傷の治療において、科学的に効果が実証されたアプローチを普及させる妨げになる。毒ヘビに咬まれた時の効果的な対処法や、迅速に専門家による治療を受けることの重要性を人々に啓発することは不可欠だが、古くからの文化的慣習と相容れないという理由でしばしば反発を受けるのだ。

これら3つの要因が、毒ヘビ咬傷と効果的治療のあいだに危険なギャップを生み、リスクを大幅に増大させ、ビッグ・フォーによる咬傷事故に伴う合併症を重篤化させている。

インドの緑豊かな景色、穏やかな村の生活、牧歌的な環境に引かれる人は、毒ヘビ咬傷のリスクに備えた安全対策を徹底しよう。こうした土地の穏やかな美しさは確かに魅惑的だが、致死的な毒ヘビとの遭遇が頻繁に起こる場所でもあることを忘れてはならない。
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翻訳=的場知之/ガリレオ

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