教育

2024.07.02 14:15

日本人の残念なビジネス英語その1:桑野氏の「ハイコンテキストすぎる」納期設定

LiubomyrVorona/GettyImage

桑野氏の2つ目の例
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次もまた、行間の広さが英語と日本語で異なる事例である。

メール文抜粋:

色相:サンプルは赤みがかった側に近いですが、色を黄みがかった側に近づけていただけますか?
(Hue: the sample is near the reddish side, could you adjust the color to be more near the yellowish side?)

この文章で「行間が広い箇所」は、「赤みがかった側に近い」と「色を黄みがかった側に近づけて」である。だが、これでは「どの程度黄色味がかった色に近づけるか」が主観にゆだねられ、人によってとらえ方が大きく異なってしまう。
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桑野氏と現地工場の担当者はやり取りに慣れている間柄ではあった。が、それでも「どの程度」という行間を埋めるために、サンプル画像のやり取りを、考えていた以上に行わなければならなくなってしまった。

桑野氏も、「曖昧な表現に含まれるニュアンス」が伝わらないジレンマを込めて、「日本の工場だったらやり取りはもっとスムーズなんですけどね」と言っていた。

しかし、日本の取引先も、桑野氏が言う「赤みがかった側に近い」「色を黄みがかった側に近づけて」のニュアンスを汲み、「ここら辺の色見のことだろう」と読み取ろうとする努力を重ねた結果、理解するのである。

桑野氏には上のように、行間を読み取ろうとする文化とそうでない文化の違いを説明した上で、たとえば「取引先と同じモニターが付いたデジタルカメラを使って写真を取る」とか、可能であれば”黄みがかった側に近づける”を「共通の数値で表現する」など、行間を狭める工夫ができることも助言した。

またスマートフォンが世界的に普及している現在であれば、同じ機種を使用した上で、色を表すためのアプリを活用する、といった方法もあるだろう。

筆者のクライアントのほとんどが「英語の上達こそ海外コミュニケーションの上達」と考えている。しかし、上記のケースを見るだけでも、取引先が空気を読もうとするかそうでないかで、表現やコミュニケーション方法に工夫が必要であることがイメージできるだろう。

次回は、単語やフレーズによる行間の違いではなく、日本のハイコンテキスト文化が「商品説明資料」に顕著に表れてしまった例を紹介する。

まずは商品資料をローコンテキスト文化に合わせる助言をし、そののち、空気を読みあうハイコンテキスト文化に合わせた言い回しを、どのようにローコンテキスト文化に合わせ、行間を狭めた言い回しに修正したかをみていこう。



日本人の残念なビジネス英語その2:「あうんの呼吸で失敗」の柳田氏 に続く


松樹悠太朗(まつき・ゆうたろう)◎1978年香港生まれ。国際交渉のコンサルティングを行うYouWorld 代表取締役。特徴的な技術は、日本語と英語の行間や作法の違いによるコミュニケーションのニュアンスを調整すること。特に国際交渉の軌道修正、効果的な英文Eメール、プレゼン資料の修正において成果を上げている。クライアントはスタートアップCEO、金融機関取締役、日系商社支社長、製薬関連企業代表、日本刃物ブランドなど。

文=松樹悠太朗 編集=石井節子

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