その原因としては、大きく分けて2つあることをすでに示した。
1.「海外側に空気を読んでもらうことを期待してしまった(本連載では「その1」で扱った桑野氏の2つの例、「その2(本稿)」で扱う柳田氏の2つの例)」
2.「日本側が空気を読みすぎた(本連載では「その3」で扱う沼野氏の例)」
日本人の残念なビジネス英語その1:桑野氏の「ハイコンテキストすぎた」納期設定 に続き、今回は、単語やフレーズによる行間の違いではなく、日本のハイコンテキスト文化が「商品説明資料」に顕著に表れてしまった例を紹介する。
まずは商品資料をローコンテキスト文化に合わせる助言をし、そののち、空気を読みあうハイコンテキスト文化に合わせた言い回しを、どのようにローコンテキスト文化に合わせ、行間を狭めた言い回しに修正したかをみていこう。
参考>>日本人の残念なビジネス英語その1:桑野氏の「ハイコンテキストすぎた」納期設定
参考>>日本人の残念なビジネス英語その3:「行間読んで失敗」の沼野氏
1.「海外側に空気を読んでもらうことを期待してしまった」:柳田氏の場合
柳田氏は再生可能エネルギー発電機に使われるパーツメーカーの国際営業部に勤務している。
日系パーツメーカーC社は日本では大きなシェアを獲得しているが、国際市場では世界的な機器メーカーであるB社とM社に市場を占有されており、導入コストの面ではB社とM社の方に軍配が上がる状況であった。しかし日系パーツメーカーC社には専門的な技術力があり、パーツ寿命が長く、耐久性と扱いやすさからランニングコストとメンテナンスコストではB社とM社を上回ることが計算の上でもわかっていた。このことから海外市場においては、ランニングコストとメンテナンスコストへの理解が得られれば勝機があると考えていた。
相談のタイミングはヨーロッパの見本市を控え、英語版の商品紹介資料に目を通してほしいという内容であった。
柳田氏の1つ目の例
実際にこの資料を見た際にまず感じたことは、資料そのものが、ハイコンテキスト文化である日本市場および業界向けに、作り上げられているということだった。
具体的に説明しよう。まず、空気を読む努力を積み重ねた取引相手に対し、言わなくてもわかることが資料では丁寧に割愛されている一方、商品に使われている材料、そして商品の耐久性を示すために行った第三者機関によるテスト結果など、業界の人が購買の判断を行う際の詳細は記載されていた。
また、業界の慣習などもあるのだろうが、筆者が閲覧した資料の表紙となるページには、再生可能エネルギー用の発電機「全体のイメージ画像」があるだけで、販売している商品画像さえ割愛されていた。他社商品と比較した情報なども紹介されていなかった。
C社は日本では市場の占有率が高いことから、この資料は「少なくとも日本のバイヤーに対して」は的を射たものなのかもしれない。