教育

2024.07.03 14:15

日本人の残念なビジネス英語その2:「あうんの呼吸で失敗」の柳田氏

サプライヤー側とバイヤー側の関係の成熟度が増すにつれ、「あうんの呼吸」が生まれてくるが、ハイコンテキスト文化である日本の場合、この「あうんの呼吸」でやり取りされる情報がローコンテキスト文化と比べるとはるかに多くなる。

そのため、成熟した間柄でやりとりされる商品説明資料は、新参者にはとても理解できない内容となってしまっていた。

しかしこの資料では、これから商品を知ってもらおうとする国際市場では説明足らずだ。そこで、日本市場のハイコンテキスト文化を背景に作られた資料を、ローコンテキスト文化であるヨーロッパ市場向け資料に手直しするために、以下のような助言を行った。

資料の改善点(資料の目的:商品の認知および販売ツール)

・資料の表紙には商品の画像を掲載する。再生可能エネルギーの発電機の「イメージ画像」を掲載する場合も小さくし、商品画像の方を大きくして「どちらが商品か」を明確にする。

・海外市場の現状と課題点を明記するページを作成し、商品の平均耐久年数、年間メンテナンス費用、さらには発電所の脱炭素化など、出来るだけ客観性が得られやすい「数値」を用いて説明を展開する。

・海外市場で流通している他社商品や代替え商品との比較ページを作成。このページの使命は「C社の商品が海外市場の既存課題を解決する」ことの主張である。そこで、海外市場で確認されている耐久年数やメンテナンスの難しさなどの「課題」をまずは出来るだけ数値で示し、これらの課題をC社の商品がどのように克服できるのかを説明する。加えて、環境への配慮など、脱炭素化への効果などが数値化されているのであれば、それも織り込むことが望ましい。

・第三社機関によるテスト結果の扱い方は、資料のページごとの「メッセージ」と照らし合わせて使う。ページのメッセージとの関連性がなければ削り落としておき、商談が進んだ際の補足資料として活用する。「まずは興味を引く」ことが見本市では最優先になるからである。

C社の場合、日本市場と国際市場では営業スタンスが大きく異なる。日本では大手メーカーであり、バイヤーとの長い付き合いもある。一方、国際市場では新参メーカーで、バイヤーとの関係は浅いか、あるいはまったくないかだ。だからこそ、上を参考に英語の資料を整え、日本市場では言うまでもないことでも、国際市場ではしっかりと説明をする必要があった。

ハイコンテキスト文化によるコミュニケーションスタイルを背景に、日本のビジネス業界では、「言わなくてもわかる」「言わなくても当たり前に知っている」ことが言語化されないことは実に多い。それが、国際ビジネスの舞台で、資料上の説明不足、ひいてはコミュニケーションのズレとなって現れるのだ。

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文=松樹悠太朗 編集=石井節子

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