教育

2024.07.03 14:15

日本人の残念なビジネス英語その2:「あうんの呼吸で失敗」の柳田氏

LiubomyrVorona/GettyImages

柳田氏の2つ目の例
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同じC社柳田氏の例でもう一つ説明しよう。「柳田氏の1つ目の例」で助言を行った資料では、ローコンテキストに合わせた文章の修正も助言した。

とくにハイコンテキスト文化の「本論で主張を読み取らせる」スタイルから、ローコンテキスト文化で主流となる「主張と本論」の構成に書き換えた。これはコミュニケーション文化の差による伝え方の「作法の違い」と理解できるだろう。

実際の例文を見てみよう。資料の最後のページに書かれていた文章である。わかりやすいように全て日本語訳で説明する。
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原文:

2023年現在、日本では200基に導入、海外では2019年に発売開始し、現在30基に導入

編集文:

弊社Cの提供する商品は、日本の発電機の耐久性とメンテナンス期間の延長を確かなものにしている。

日本全国でxxx基ある発電機のうち、200基に弊社のパーツが取り付けられており、全体のxx%に相当することからも、弊C社の商品の品質が日本市場では認められているといえる。

弊社の提供する製品は、日本市場と同様、世界の発電機の耐久性とメンテナンス周期を延長するだろう。

この商品は2019年以来、海外市場でも提供を開始しており、現在すでに30基に導入されている。

原文では現状の商品の導入数を紹介しているが、ハイコンテキスト文化で行間を読み取ろうとするバイヤーであれば、「大手メーカーだな」「高い実績があるんだな」「信頼されている商品なんだな」という主張を読み取ってくれる。だからこそ、「2023年現在、日本では200基に導入、海外では2019年に発売開始し、現在30基に導入」という情報提供のみに留めた文章になっているのだろう。

しかし、ローコンテキスト文化では、「主張」は発言者が言語化するのが通常のコミュニケーション作法となる。したがって、編集文の太字で表したような「主張」を資料に書き加えたのである。

取引先の相手との付き合いが長くなればなるほど、「言わなくてもわかり合える」ことが増える。これは日本でも海外でも同じことである。

しかし、日本はハイコンテキスト文化であり、相手が行間を読み取ろうと努力してくれる。この結果、言語化されていない情報がローコンテキスト文化よりも多くなりやすいことを理解しておくことは、国際コミュニケーションの円滑化のヒントになるだろう。

これらの助言を参考に資料に手直しを加えた柳田氏は、ヨーロッパの見本市でプレゼンを展開した。結果、国際バイヤーの反応は通常よりも良いものだったと報告してくれた。

これまではローコンテキスト文化が「行間など読まない」ことから生じる国際コミュニケーションのズレを見てきたが、次回はハイコンテキスト文化側が「行間を読みすぎる」ことで、国際コミュニケーションが難しくなってしまったケースを取り上げる。



日本人の残念なビジネス英語その3:「行間読んで失敗」の沼野氏 に続く

松樹悠太朗(まつき・ゆうたろう)◎1978年香港生まれ。国際交渉のコンサルティングを行うYouWorld 代表取締役。特徴的な技術は、日本語と英語の行間や作法の違いによるコミュニケーションのニュアンスを調整すること。特に国際交渉の軌道修正、効果的な英文Eメール、プレゼン資料の修正において成果を上げている。クライアントはスタートアップCEO、金融機関取締役、日系商社支社長、製薬関連企業代表、日本刃物ブランドなど。

文=松樹悠太朗 編集=石井節子

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