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2024.06.15 10:45

400年劣化しない太陽電池 宇宙空間で自己修復

プレスリリースより

日本で豊富に産出される黄銅鉱を原料にした薄膜型のカルコパイライト太陽電池は、放射線を浴びて傷付いても自分で修復する能力があるため宇宙での利用が期待されている。今回、その自己修復力のすごさが確認された。地球低軌道上では400年間ほとんど劣化しないという、まさに不死身の太陽電池だ。

やはり日本で豊富に産出されるヨウ素を原料として、発電効率が高い「曲がる太陽電池」としてペロブスカイト太陽電池が注目されているが、カルコパイライト太陽電池と組み合わせることで、さらに高効率なタンデム太陽電池となる。それを開発したのは、次世代型太陽電池の量産化を目指すグリーンテックスタートアップのPXPだ。
陽子線被ばく量と自己回復強化型太陽電池の性能維持率。

陽子線被ばく量と自己回復強化型太陽電池の性能維持率。

同社は、破壊力の大きな陽子の大量被曝でも自己修復が可能なカルコパイライト太陽電池を開発。それだけでも超軽量、長寿命、低コストという高性能を誇るが、そこにペロブスカイト太陽電池を重ねたタンデム型太陽電池の開発を進めている。効率的に発電する光の波長がそれぞれ違うため、お互いを補って、理論上の発電効率は30パーセントを超えるという。
PXPの開発ロードマップ。

PXPの開発ロードマップ。

だが課題は2つ。ひとつは、宇宙空間の低温環境で、ペロブスカイト太陽電池を透過した弱い光でもカルパイライト太陽電池が十分な自己修復機能が発揮できるかどうかだが、これは可能であることが判明し、今年シアトルで開催された第52回IEEE太陽光発電専門家会議で報告された。もうひとつはペロブスカイト太陽電池の耐久性の問題だ。画期的な太陽電池ながら、熱と光への耐性が低いという弱点がある。そこが克服されたなら、たとえば太陽光だけで30キロメートル走行できるEVが実現する。
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現在同社は、世界初の方法でペロブスカイトとカルコパイライトのタンデム構造に全固体電池を一体化させたソーラーパネルを開発し、量産技術パイロットラインを稼働させたところだ。「将来的には超長期の運用が必要とされる宇宙太陽光発電システムに不可欠な技術となり得る」とCEOの杉本広紀氏は期待を語っている。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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