食&酒

2024.06.19 11:15

チリの隠れた宝、ファインワインの実力と進化

田崎氏は、2021年のワインについて、「花の香りと果実の濃縮感の調和があり、スパイスやわずかな木の樹脂の香りがフレッシュ感を与えている。口に含んだ時、広がりや豊かさがあり、タンニンの成熟度の高さによる、なめらかさが、余韻にかけてのコクにも繋がっている。カイの目指す、ひとつの完成形だ」とコメント。

最後のフライトは、「ヴィニエド・チャドウィック」の2000年、2014年、2021年。「父ドン・アルフォンソへのトリビュート」だと言い、チャドウィック氏の家族への想いが詰まったワインだが、この2000年ヴィンテージは、まさに、2004年に開催されたベルリン・テイスティングで首位を獲得し、チリワインの歴史を変えたものだ。アコンカグアの南に位置するマイポ・ヴァレーのプエンテ・アルト地区で造られる。

チャドウィック氏はこの地について、「内陸に入り海岸からの冷涼な影響はないが、アンデス山脈の麓にあるため、山脈からの冷たい風により日中の気温が穏やかになります。土壌は、カベルネに最適とされる砂利。ここは歴史的にもチリで最良のカベルネが育つとされている場所です」と説明する。

2021年の「ヴィニエド・チャドウィック」は、ワイン・アドヴォケイトを始め複数の批評家から満点を獲得し、マイルストーンとなったヴィンテージで、田崎氏も完成形だと絶賛する。さらに、今回試飲した4銘柄とも、最新の2021年を選んでいる理由について、田崎氏は「ここに目標があったのだと、非常にわかりやすく表現されている年」だと説明し、歴史を辿ることにより、進化を遂げている近年のチャドウィック氏のワインを評価した。

ベルリン・テイスティングから20年が経った今、世界のワイン地図もダイナミックに様変わりしている。そんな中、今回の試飲を通じて、筆者自身も、20年前にテイスターたちが感じたであろう、新たな発見による興奮や刺激を受け、チリワインの品質と熟成可能性、着実な進化を体感する機会となった。

また今回の試飲セミナーは、日本を代表するソムリエやワインプロフェッショナルの顔ぶれが揃い、注目の高さと同時に、チャドウィック氏が長年かけて築いてきた日本との絆の深さを感じさせるものだった。

一方、セミナーでもトピックに挙がったのが、日本でのイメージだ。チリワインは輸入規模や知名度としては成功しているが、多くの人が抱く低価格帯ワインの印象を払拭できずにいる。チャドウィック氏も「日本のワイン市場でチリワインの存在は大きい。チリワインはファインワインとしての品質も独自の特性も持っている。日本のファインワインに興味を持つ層にも、ぜひ知っていただきたい」と最後にコメントした。

彼には4人の娘がいる。今回は、娘のアレハンドラ氏も一緒に来日し、次世代への繋いでいく模様も垣間見られた。今後もチャドウィックファミリーの歴史と進化は続きそうだ。

文=島 悠里、写真=ヴィニェドス・ファミリア・チャドウィック

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