NASAも採用「重力制御装置」 宇宙再生医療が実現する未来
2. GRAVITE(グラビテ)
広島大学発の再生医療スタートアップ、スペース・バイオ・ラボラトリーズが開発した重力制御装置「Gravite」(グラビテ)。物体をふたつの軸で複雑に回転させることで、国際宇宙ステーションと同じ1,000分の1Gという微小重力環境や、2Gや3Gといった過重力環境を人工的に生み出し、医療や創薬、生物学などの研究に活用されている。装置の大きさは卓上用から人が入れる大型まで、研究用と臨床用に対応できる。2015年の発売以降、NASAケネディ宇宙センターやメイヨクリニック、理化学研究所、京都大学iPS細胞研究所などに導入され、国内外で実績を積み、販売先は8割が海外。同社でCEOとCTOを務める弓削類は、20年以上「宇宙再生医療」の研究に取り組んできた。Graviteを開発し、無重力空間を活用することで、身体の組織や臓器の修復に必要な未分化幹細胞の大量培養に成功。15年にはNASAの宇宙開発プロジェクトの諮問委員会で、世界で6人のメンバーのひとりに選ばれた。現在弓削は、再生医療と自ら開発したロボティクスをかけ合わせた最先端リハビリテーションセンターをつくる構想を故郷・山口と大阪で進める。「宇宙分野の研究で培った技術を生かして、ブラックジャックのように患者さんを救いたいですね」
宇宙生活を食で豊かに 進化形「3Dフードプリンター」
3. LASERCOOK(レーザークック)
宇宙ですしを食べられる──山形大学教授の古川英光が開発する「3Dフードプリンター」は、それを現実にするかもしれない。古川は、液体と固体の中間の物質である「ゲル」の研究で得た知見を生かし、3Dプリンターによる食品の成形技術を開発した。古川が手がける宇宙食3Dプリンターは2種。ペースト状の素材を積み上げるスクリュー式と、粉末状の食品を溶かした液体にレーザーを当てて固めるレーザー式だ。これにより、見た目も味も本来の食材にそっくりな食品を、場所を問わずにつくることが可能になった。その利便性を生かし、介護食や病院食への導入の検討が進む。機械ひとつで、やわらかさや味、栄養素をカスタマイズできるため、施設の入居者や患者の食生活の質向上が見込まれ、介護や医療現場の人手不足の解決手段としても期待される。2023年には実用化に向け、フードテック企業「レーザークック」が設立された。
古川が目指すのは、3Dフードプリンターの宇宙での活用だ。粉末の材料さえあれば調理可能なため、輸送コストやフードロス、ごみの削減といった宇宙滞在にまつわる課題を一気に解決できる。「宇宙が民間人も訪れる身近な場所になると、待っているのは食の問題。そこが自分たちの出番かなと思っています」