音楽

2024.06.03 13:30

プリンスの「クラウドギター」が数十年ぶりに発見、1.4億円で落札

オークショニアのジュリアンズと、ペイズリー・パーク(かつてのプリンスの邸宅兼スタジオで、現在はミュージアムになっている)のアドバイザーを務めるギター歴史家のジョン・ウッドランドは、この楽器が当時の本物のクラウド3であり、かつてプリンスがステージで手にしたものであるという来歴を改めて証明するために、共同でこの楽器の困難な調査に取り組んだ。その作業には、塗装層のCTスキャンや、ルサンら関係者との詳細なやり取りが含まれる。それは、この20世紀後半の楽器に関する来歴を明らかにするという偉業の達成にほかならなかった。

ジュリアンズの調査はその過程における副産物として、オークション会社のクリスティーズが、この楽器を二度もレプリカとして販売したことがあるという最も痛快な事実も発見した。来歴調査では十分に深く掘り下げないと嵌りがちな落とし穴だ。

ジュリアンズの共同創設者でエグゼクティブディレクターを務めるマーティン・ノーランは、ジェットコースターに乗ったようなクラウド3の広範な来歴再確認の過程を、独特の表現で優雅に淡々と語っている。

「数カ月前、私たちはジョン・ウッドランドから連絡を受けました。eBayでクラウド・ギターを購入した顧客がいるという話でした。ジョンはプリンスのギターに関するペイズリー・パークのアドバイザーであり、トップクラスの専門家の1人です。ジョンはジュリアンズが、それが単なるレプリカではないことを確認する作業に協力し、そのギターを引き受ける気はあるかと尋ねました。私たちはプリンスのクラウド2の件でもいっしょに仕事をしたことがあり、だから彼はこのギターでも私たちに鑑定の協力を依頼してきたのです」

「クラウド2でやったのと同じように、私たちはこのギターをCTスキャンにかけ、ギター本体に加えられた変更作業や、何度か塗り重ねられた塗料の層をすべて確認しました。ジョンの指示に従って、極めて詳細な確認と多くの算出された測定を行った結果、このギターが確かに、80年代に使用されたプリンスの行方知らずになっていたクラウド3であることが判明しました」

「さらに調査を進めると、クリスティーズが二度、この楽器をレプリカとして販売していたこともわかりました。どういうわけか、これがプリンスの最も重要なギターの1つであることを見逃していたようです。そして私たちはデイブ・ルサンと話し、私たちの調査結果のすべてを彼と共有しました。ルサンはこれが4本製作されたクラウド・ギターのうちの1本であり、正確にはクラウド3であることを確認しました」

すなわち、それはとてもとてもクールなロックンロールの至宝を、縄で海から引き上げるような確認作業だったというわけだ。

forbes.com 原文

翻訳=日下部博一

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