初日にはジョン・レノンがビートルズ在籍時に『ヘルプ!』の作曲と演奏に使用したというFramus Hootenanny (フラマス・フーテナニー)のすばらしい12弦アコースティックギターが出品され、この不確かな世界で依然として偉大なギターは途方もないお金を引き出せるということを強力に証明した。その285万7500ドル(約4億5000万円)という落札価格は、ビートルズの使用したギターとしては最高記録だ。このハンマープライスだけで、2日間のオークションにおける総売り上げの3分の1に近い金額を叩き出している。
上掲の写真は、2日目の注目出品物だったプリンスの「クラウド3」ギターだ。1980年代初期、ミネアポリスの名ギター製作職人デイブ・ルサン(現在も製作を続けている)は、自身のアトリエでプリンスのために「クラウド」と呼ばれる一連のギターを何本か製作した。このクラウド3は、1984年にリリースされたアルバム『パープル・レイン』から1991年のアルバム『ダイアモンズ・アンド・パールズ』発表後のツアーまで、レコーディングやステージで使用されたという。今回のオークションでは91万ドル(約1億4000万円)という落札価格を記録した。
このギターには物語がある。ルサンは全部で4本のクラウドをプリンスのために製作したが、このクラウド3は何年もの間、紛失してしまったと考えられていた。ところが、なんとインターネットオークションサイトのeBayで発見されたこのギターを、ある冒険心に富んだ購入者が運よく手に入れた。このギターは当初、プリンスのために最初に製作された4本のオリジナルのうちの1本ではなく、ルサンによって後から製作されたものだと考えられていた。
かつて果敢にもプリンスの初期のバンドに参加しようとしたこともあるルサンは、品のある控えめな表現で次のように述べている。プリンスは演奏を締めくくる時、ギターを舞台の袖に向かって放り投げるのが常だったが、ルサンが叙情的にいうように「楽器は必ずしも受け止めてもらえるわけではなかった」