働き方

2024.05.29 09:15

タクシードライバーのボリュームゾーンは70代。日本版ライドシェアの意外な実態

Jerry Driendl / Getty images

宅配ドライバー業界は個人事業主の参入で事故が2倍に

一方で、日本版ライドシェアが雇用の形をとっているのにはワケがある。タクシー会社による運行管理や車両整備を通じて、安全性を確保するためだ。ドライバー教育や呼気検査も実施される。
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こうした基盤を整えず参入者が増えてしまい、事故の激増が問題視されているのが軽貨物運送、いわゆる宅配ドライバーの業界である。2016年時点では199件であった軽貨物運送に起因する死亡・重傷事故件数だが、2022年には433件にのぼる。ちなみに新規参入者は2倍に満たない。

この問題に対し、軽貨物事業者は営業所ごとに「安全管理者」を専任、個人事業主は本人を「安全管理者」とすることを義務づける動きが見られる。本人の管理とは、信用できるものなのか、甚だ疑問である。

日本版ライドシェアでは、タクシー会社が運送契約の主体となり管理することで、コンプライアンス意識を高め、事故を抑制する狙いがあるだろう。運ぶ対象が「人」である分、その責任は重い。
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もちろん物流と旅客では異なる因子が含まれるため、単純に比較はできないものの、近しい状況ではないか。海外版ライドシェアでは、アプリ会社または、ドライバー本人が運送契約の主体となり、管理を行っており、日本でもさらなる規制緩和が検討されている。

海外では性犯罪が多発

危惧されているのは、事故に対する安全性だけではない。性犯罪や障害、強盗など秩序に関する安全性がもうひとつの論点だ。

海外ではライドシェア利用時の犯罪が多発している。Uber Japan社がまとめた資料によれば、2019年に米国のUberで発生した性犯罪は998件と、インパクトのある数字だ。しかし、そもそもの治安事情が反映されているため、米国の犯罪発生率を加味すれば、「Uber乗車時の性犯罪率が際立って高いわけではない」と結論づけている。(出典:「諸外国におけるライドシェア法制と安全確保への取り組み

こうした主張ができる背景には、Uber社の安全性の確保に向けた取り組みがある。そのひとつとして相互評価制度が挙げられる。つまり客がドライバーを選べるだけでなく、ドライバーも客を選べるのだ。世界の23カ国では、女性客には女性ドライバーのタクシーが配車される仕組みも導入しているという。

また、日本版ライドシェア全般においても、支払いのトラブルを防ぐために事前に運賃を確定させて、キャッシュレス決済のみとする仕組みを採用している。

そしてさらなる安全性強化に向けて、タクシー・ライドシェアサービスを運営するnewmo社は、ドライバー登録時の厳格な審査体制を整えていく。運転歴や免許証のチェックだけでなく、犯罪歴や健康面状態(既往歴、持病、健康診断を含む)、反社チェックなども対象だ。

事故と犯罪。両面の安全性は確立されていくのだろうか。
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文=田中なお 編集=石井節子

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