ヘルスケア

2024.05.23 17:00

認知機能の衰えない高齢者「スーパーエイジャー」 秘密は脳の白質にあった

重要なのは、アルツハイマー型認知症の兆候を示した参加者が一人もおらず、認知や記憶の変化がアルツハイマー病に起因している可能性を排除できたことだ。

スーパーエイジャーになれる秘訣はある?

ここで誰もが気になる疑問は、もちろん「どうすればスーパーエイジャーになれるのか」だろう。残念ながら、科学的な正解というものはない。

生活習慣に関するアンケートをみると、スーパーエイジャーと一般的な高齢者の生活習慣には、予想外に多くの共通点があった。全体として2つのグループは同じような食生活を送り、睡眠時間の長さもあまり変わらず、喫煙と飲酒の量にも違いはなかった。健康的な加齢の重要な指標である運動量でさえ、ほとんど差はなかった。スーパーエイジャーは中年期には同年代の一般的な人より活動的な傾向があったが、老年期に入ってからは両者間で違いはみられなかった。

「スーパーエイジャーになるために今すぐ始められる5ステップ・プログラム」といった代物があれば誰もが喜ぶだろうが、実際のところ生活習慣云々よりも、遺伝的な要素が関係しているようだ。スーパーエイジャーはかなり珍しい存在である可能性が高く、シカゴ大学のエミリー・ロガルスキー教授(神経学)によれば、診察する患者のうち該当すると思われるのは10%に満たないという。

今のところ、スーパーエイジャーは一般的な高齢者よりも白質の減少するスピードが遅いことがわかっている。この事実は、スーパーエイジャーが鋭い記憶力やすばやい推論力など、健康な脳機能を高齢になっても維持している理由を説明している。しかし、そもそもなぜスーパーエイジャーは白質の減少スピードが遅いのかは、まだ解明されていない。つまり、脳機能を老化から守るメカニズムは解明されているが、その対象となる脳の持ち主を決定する要因はまだわかっていないのである。

もっとも、今回の研究では生活習慣に因果関係はみられなかったものの、体をよく動かし、社会との結びつきをしっかり保ち、健康によい食生活を送るといった健康的な生活が長寿につながり、「健康寿命」すなわち健康に生活できる期間を延ばす効果をもつという証拠は豊富にある。

forbes.com 原文

翻訳・編集=荻原藤緒

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事