老いた脳を若返らせるタンパク質「血小板第4因子」の研究でわかったこと

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輸血、運動、長寿ホルモンは何が共通しているだろう? これら3つはすべて認知機能を向上させ、脳をある程度若返らせる助けとなる。問題は、その改善のための正確な分子を特定できなかったことだ。このたび、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の2チームとオーストラリアのクイーンズランド大学の1チームからなる3つの研究チームが、血小板第4因子(PF4)と呼ばれるタンパク質への介入を通した脳増強効果を追跡することで、その暗号を解読した。

若い血、若い脳

ネイチャーに掲載された最初の研究は、輸血に焦点を当てている。アダム・シュローアとパトリック・ベンチュラが率いる研究グループは、老齢のマウスに若いマウスの血を注射した。若い血液が流入することで、筋肉が強化され、脳の炎症が減少するなど、あらゆる健康改善がもたらされることに気づいた。何らかの方法で、若いマウスの血が老齢のマウスの生物学的時計を戻すのを助けていたのだ。

若いマウスの血液を分析したところ、年老いたマウスの血液よりも血小板第4因子の濃度が明らかに高いことがわかった。若い人間の血液と年配の人間の血液を比べても同じことが観察された。

真犯人を見つけたかどうかをテストするために、彼らは血小板第4因子を分離し、若い血を加えることなく直接老齢のマウスに注射した。それまで同様に、老齢マウスは若返り始め、記憶と密接に関係する海馬の炎症が減少し、脳の結合性が高まり、思考能力が向上した。

論文著者であるサウル・A・ヴィレダ博士は「生後22カ月のマウスは人間の70歳代に相当しますが、PF4によって30歳代後半から40歳代前半に近い機能を取り戻しました」と語っている
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翻訳=酒匂寛

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