広く知られるブランドの構築、とりわけYouTubeにおける実践は、タンが設立したVC、イニシャライズド・キャピタルの知名度を大きく引き上げた。彼は、それと同じ手法をYCで試みている。
「ソーシャル・メディアで自分自身をアピールすればするほど、その効果は大きくなります」
タンによると、YCの黄金期を築き上げた起業家たちは、グレアムの書いた人気のエッセイを通じてYCを見つけ出し、スタートアップに関するハウツーを共有。それがハロー効果(後光効果)を生んでいたという。TwitterがXへと名を変えた現在、YCのタッチポイントも新しくなっている。例えば、タンと他の3人のパートナーが最新のテックトレンドについて語るビデオポッドキャストシリーズ、「Lightcone Podcast」だ。最初の2つのエピソードでは、AIとApple Vision Proのリリースを話題として取り上げている。
「私のブランディングはできているのですが、YCには各グループ合わせて14人のポール・グレアムがいてほしいのです」
しかし、タン自身のもつブランドも論争を避けられてはいない。個人的な投稿は1日あたり数分程度のものかもしれないが、それが爆発すると、深夜であってもYコンビネーターのCEOの発言であることに変わりはなく、ニュースの見出しを飾ることになるのだ(彼はかつて、敵視する地元の政治家宛てに「ゆっくり死ね、マザーファッカーズ」というメッセージを送って謝罪、該当の投稿を削除した)。
「ギャリーが政治の問題に大きな声を上げることが、YCの名前にとって有益だとは思わない」とある起業家は言う。また、いまでもYCの大ファンだと話す別の起業家も、次のように指摘する。
「私の考える理想は、ギャリーが政治的な取り組みを一時的に中断して、YCをよりよくするために専念することです」
タンはこのような反応に「有益なフィードバックだ」と返し、個人的な名声や将来な選挙への出馬に突き動かされているわけではないと主張する。それにも関わらず、忠告をすぐに受け入れるつもりはない。
「やらなければならないのなら、私はやります。それが大義のためなら。」