現在、今後の活用について研究を進めているところだが、皮脂を採取して解析しなくても、スマートフォンで写真を送るだけでどちらの肌タイプかを予測できる技術もできてきているという。
また「皮脂RNAモニタリング」は、スキンケア領域だけでなく、医療やヘルス分野への応用研究も進んでいる。花王と、順天堂大学、Preferred Networks(PFN)による共同研究では、パーキンソン病患者の皮脂中のRNAに特有の情報が含まれていることを発見し、早期診断につなげられる可能性を見いだした。今後、実用化に向けて、さらに研究が進められる予定となっている。
さらに、国立成育医療研究センターとの共同研究では、早期にアトピー性皮膚炎を発症した乳幼児の皮脂RNAは、生後1カ月の段階ですでに乳幼児アトピー性皮膚炎に特有の特徴が見られることを発見。今後の早期発見と早期治療への応用を目指している。
共創で進化が期待される技術の可能性
花王は2024年3月、コスメ・美容の総合サイト「@コスメ」を運営するアイスタイルとともに、「皮脂RNAモニタリング」技術を核としたビジネス共創を目指す「RNA共創コンソーシアム」を設立した。共創パートナーにはコーセー、マツキヨココカラ&カンパニー、キリンホールディングスといった企業が名を連ね、企業の枠を超えて美容やヘルスケアの分野で新たな価値を生み出すことを目指す。「研究で得られた知見を、1企業の枠を超えて本当に有用な製品やサービスにし、顧客に届けるのが非常に大切なことです」と菊池氏は強調する。最近では国内だけではなく、海外からの問い合わせも増えつつあるという。
花王をはじめとする企業や研究機関により「皮脂RNA」活用の応用が進化すると、私たちにどう役立つかはこれからさらに明らかになっていくだろう。生まれたばかりの発見と技術のこれからに期待したい。