皮脂RNAモニタリングを応用した肌解析
「皮脂RNAモニタリング」を応用した花王のサービスのひとつが、2024年4月に本格的に始まった、それぞれの肌状態に合わせたスキンケアプログラムを提案するサブスクリプションサービス「est Skin Athlete Gym(エスト スキンアスリートジム)」だ。エスト スキンアスリートジムでは、付帯サービスとして皮脂RNAモニタリングを含む「Skin Potential Analysis」を体験することができる。参加者は自ら皮脂と角層を採取し、郵送するだけでRNAによる肌状態の解析サービスを受けることが可能だ。さらに、解析結果をもとに肌内部の状態を精緻に把握し、自分に合ったケア方法やライフスタイルのアドバイスなどを専属のスキンポテンシャルアナリストから受けられる。
筆者もこの肌解析サービスを体験取材した。届けられたキットを使い、起きてすぐの洗顔前の皮脂と洗顔後の角層を採取し、送るだけだ。肌に関する解析結果は、うるおいの保ちやすさや逃げやすさ、ターンオーバーの乱れやすさ、乾燥・肌荒れのしやすさといった「角化関連指標」、紫外線ダメージの受けやすさ、肌の酸化しやすさといった「酸化関連指標」、肌や体内の糖化しやすさといった「糖化関連指標」、環境ストレスの受けやすさといった「その他」の計4カテゴリ12項目で示されている。
筆者の場合、肌の生まれ変わりは正常で、良質なタンパク質が生み出せているが、紫外線ダメージと今後の抗酸化力の低下、糖化の進行が気をつけるべきポイントとして示され、ライフスタイルのアドバイスとして、部屋の中でも紫外線を避けることや、おすすめの食材などをアドバイスしてもらった。
また、花王のプレステージブランドである「est(エスト)」で現在の肌状態に合う製品を教えてもらい、これまで自己判断で選んでいたスキンケア製品を、科学的根拠によって選ぶことができるという体験も興味深かった。
医療やヘルス分野への応用
これらの研究を通じて、「人にはこれまでの考え方とはまったく異なる2つの肌タイプがある」という発見もあったというのは、花王のスキンケア研究所でグループリーダーを務める菊池祥氏だ。「皮脂RNAモニタリングによって得られた遺伝子発現情報に基づき、新しい2つの肌タイプ分類があることがわかってきました。これらは、これまでスキンケア製品を選ぶときの指標にしてきた年齢や、乾燥肌・脂性肌といった肌質とは無関係な分類であり、『肌遺伝子モード』と呼んでいます」という。