アジア

2024.05.17 13:00

マイクロソフト、中国在住のAIエンジニアに「国外への異動」を提案

Getty Images

バイデン政権が、AIを始めとする米国の先端テクノロジーに対する中国のアクセスを制限しようとする中、マイクロソフトはAIやクラウド事業に所属する中国在住の従業員の一部に、国外への移転を検討するよう要請した模様だ。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が米国時間5月16日に報じた。

WSJは、匿名の関係筋の話として、中国にいる約700人から800人のマイクロソフトの従業員が、米国やアイルランド、オーストラリア、ニュージーランドを含む国への移籍のオファーを受けていると報じた。これらの従業員は、機械学習やクラウドコンピューティングに携わる中国国籍のエンジニアが中心だという。

マイクロソフトは、WSJに対し、社内の異動は同社のグローバル事業の「通常の慣行」であり、一部の従業員に「任意の社内異動の機会」が提供されたことは事実だと述べた。同社は、中国事業に引き続きコミットしており、これまでのオペレーションを継続すると述べている。

このオファーに応じた従業員がいるかどうかや、多数のメンバーが異動した場合にマイクロソフトの中国でのクラウド事業やAIの研究活動にどのような影響が出るかは不明だ。

ロイターは今月初め、バイデン政権がマイクロソフトが支援するOpenAIのChatGPTやグーグルのGemini(ジェミニ)のような独自のAIモデルを、中国やロシアのような敵対国に輸出することを禁ずる新たな規制の導入を計画していると報じていた。

OpenAIやマイクロソフト、グーグルのようなハイテク大手が、高度なAIモデルを外国企業に提供することを規制する法律は、現状では存在しないが、政府関係者は、これらのモデルが、敵対勢力によって悪用されることを懸念している。マイクロソフトとOpenAIは2月に、ロシアや中国、イランのサイバー攻撃者が、OpenAIのツールを使って攻撃を高度化していると報告した。

マイクロソフトは4月16日、アラブ首長国連邦(UAE)に拠点を置くAI企業、G42に15億ドル(約2320億円)を投資すると発表した。マイクロソフトは、この投資が、UAEと米国との「緊密な連携」のもとに行われたと発表したが、ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、バイデン政権がG42と中国企業との密接なつながりについて懸念を表明した結果、同社がG42と結んだ契約は、ファーウェイの通信機器を含む中国製機器を事業から排除することで合意に至ったと報じていた。

G42はまた、この投資に先立ち、TikTokの親会社であるバイトダンスを含む中国企業の持ち株を売却することに合意していた。

中国のAIソフトウェアへのアクセスを抑制する取り組みは、バイデン政権が、エヌビディアの製品のような高度なAIチップの中国への輸出を禁止したことに続くものだ。米国当局は、昨年10月、AIチップメーカーが中国やイラン、ロシアなどの敵対国に半導体を販売する場合は、特別なライセンスを取得する必要があるという新たな規則を発表した。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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