「なぜブランドはもはや重要でないのか」と題したブログ記事でヤンツは次のように論じている。「最近オンラインで最もホットな測定値の一つは、消費者心理だ。これは真のロイヤリティの指標である。そのブランドについて、人々は『いいね』を付けたり、情報を共有したり、お気に入りに登録したりしているか?(中略)これらはマーケティングの成功を示す新たな潮流であり、たとえ聞いたことがなくても真に価値ある強力なブランドだという証である」
世界的なクリエイティブディレクターのレイ・イナモトは、人工知能(AI)がブランド力の低下を加速させているとみる。米ビジネス誌ファスト・カンパニーのウェブサイトへの昨年の寄稿では、AIによって「私たちが知っているようなブランドは終焉を迎えるかもしれない」と指摘。「状況は大きく変化し、個人が組織的なブランドよりも大きな影響力を持てるようになった。ブランドは個人によって新たな高みに引き上げられることもあれば、屈服させられることもある」と記した。
有名ブランドがかつてのパンチ力を失いつつあるかもしれない一方で、優れた小売企業はロイヤリティを生み、ファン層を形成していく方法を見いだしている。たとえばリーバイスは「デニム・ライフスタイル・ブランド」として再出発を試みている最中だ。顧客との共同体感覚をつくりだすことが、新しいマーケティングの常道なのだ。スポーツ小売企業は地域イベントのスポンサーとなり、学校や地域団体と協力してスポーツ資源を開発することでロイヤリティを構築する方法を会得しつつある。
小売業界ではeコマース(電子商取引)が市場を席巻し、消費者は手間もストレスもなく便利に買い物ができるようになった。しかし調査によれば、消費者が最も重視するのはフレンドリーで豊富な知識を提供してくれるサービスだ。
イナモトは小売業者に、顧客とのやりとりを対話とみなすよう小売業者に推奨している。「顧客と話し、その声に耳を傾けよ」というのは、古くて新しい考え方といえる。
(forbes.com 原文)