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2024.07.13 14:15

クマと共存するアラスカ、ベアーカントリーの大原則と西海岸の絶景|元イルカトレーナーの自然・文化遺産めぐり


自然と人間の本質に触れた、カヤックでの川下り旅

そして、カナダとアラスカを流れるユーコン川を、カヤックをレンタルして1週間ほど旅しました。実はこの時が旅してきた中で一番自然を感じたひとときだったかもしれません。
ユーコン川

ユーコン川


食事を1週間分カヤックに積み込んで、ゆったりと美しい風景や動物たちを眺めながら川を下り、お腹が空いたら川岸に上がって火を焚き食事。夜は満天の星空の中、川の音をラジオ代わりにテントで熟睡と、実に贅沢な時間を過ごしました。

電波も入らなければ、人とも出会わない。音や風にもすごく敏感になって、普段は気づけない動物の気配を感じたり、感覚が研ぎ澄まされていくようでした。

そして気づけば、家族や大切な人のことを考えていました。

こうした圧倒的な自然の中に一人でいると、人はやっぱり寂しくなるんですね。人間社会がいかに人の心のサポートになっているかを実感しました。人が一緒に暮らすことは、もちろん生物的に有利な面も大きかったのでしょうけど、心の面でも安定につながっているのだと。

一人旅でも全然余裕だと思っていた僕が、思いも寄らないところで自分を見つめ直すことができた、学び多きカヤック旅でした。
ユーコン川

ユーコン川

こんなにも身近に出会える、アラスカ、カナダの野生動物たち

もちろん、この大自然に囲まれて多くの野生動物たちが暮らしています。ここからは身近に出会えた動物たちをご紹介していきます。

まずは、アメリカの国鳥・ハクトウワシから。

日本だと動物園などでしか見られないですが、アラスカからカナダにかけてたくさん住んでいて、特にアラスカのキーナイフィヨルド国立公園、カナダのユーコン準州では毎日のように見ることができました。

かつてはアメリカで絶滅危惧種に指定されていましたが、法律による保護対策によって40年かけて生息数を回復させたそうです。
水面の獲物を探すハクトウワシ(ユーコン川/カナダ)

水面の獲物を探すハクトウワシ(ユーコン川/カナダ)


続いては、アメリカビーバーです。

湖や川に住んでいて、僕はアラスカのタルキートナレイクの湖畔で野宿していた時に出会いました。

夜9時頃、テントの中で寝る準備をしていた時に「パンパンパン」という水面を叩くような音が湖のほうから聞こえてきて、なんだろうと思っていたのですが、翌日そこに草をくわえたアメリカビーバーがすいすいと泳いでいるではありませんか!

興奮しながら急いで撮影した動画がこちらです。


デナリ国立公園では、ムース(ヘラジカ)とカリブー(トナカイ)を見ることができました。

カリブー(トナカイ)はシカ科で唯一オスにもメスにも立派な角が生えますが、ムース(ヘラジカ)は角があるかないかで、オスかメスかを見分けることができます。

体長は2〜3メートルと大きく、目の前に現れると迫力があります。
ムースのメス(デナリ国立公園/アラスカ)

ムースのメス(デナリ国立公園/アラスカ)



カリブー(トナカイ)との出会いは、それはもうとても衝撃的なものでした。

公園の奥地を求め、自転車と小分けにした重い荷物を何度も行ったり来たり運びながら、川を進んでいたら、カリブーが爆走して来たんです。動画の中央奥にご注目ください。

轢かれたら僕も自転車もひとたまりもありません。本当に怖かったですよ、“ビビり倒し” ました(苦笑)


そして怖いといえば... そうです、クマ。ブラックベアーとグリズリー(ハイイログマ)の登場です。

自転車を漕いでいると、すぐ横をのらりくらりと歩いていたり、車と違ってあまり見慣れていないのか、ビックリした様子で森の中に走っていったりします。

今回20頭ぐらいと出会いましたが、幸い僕は危険な目に遭うことはありませんでした。ただ距離も近く、足も速いので、相当怖かったです。
ブラックベアー(カッシアハイウェイ/カナダ)

ブラックベアー(カッシアハイウェイ/カナダ)


「ベアーカントリー」における野生動物との共生の知恵

では現地の人々は、そんなクマや野生動物たちとどのように付き合って暮らしているか、についてお伝えしていきたいと思います。

ベアーカントリーと言われるほど、アラスカには多くのクマが生息しており、ブラックベアーが約10万頭、グリズリーが3万頭ほどいると言われています。

人口が約73万人、日本の約4倍の面積で全米最大の州であるアラスカで、豊かな自然と生態系が保たれることの重要性を、人々はとてもよく理解しています。

日常の暮らしの中で人よりも断然よく出会うクマや野生動物たちのために人間ができることを、地元の人々やレンジャーが昔から考え、当たり前のこととして実践し続けています。

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文・写真=武藤大輔 編集=宇藤智子

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