韓国の金融委員会は2月、「企業価値向上プログラム」を発表した。韓国企業の効率性向上や取締役会の多様化、株主還元の強化などを促す取り組みだ。
このプログラムに関して尹は日本に直接の言及はしていないが、日本が重視される市場の地位を取り戻したことへの羨望があるのは明らかだ。実際、プログラムが発表されたのは、日経平均の上昇によって日本経済が世界中でニュースの見出しを飾った時期と重なっていた。
韓国をめぐっては2月、バークシャー傘下のイスラエルの金属切削工具メーカー、IMCグループが大邱に半導体素材の施設を建設するというニュースもあった。投資額は1300億ウォン(約150億円)とさほど大きくないものの、アジア4位の経済大国がバフェットとその仲間たちからさらに投資を呼び込む試みとしては、堅調なスタートになったと言えるだろう。
たしかに、規制改革や資本市場の強化、イノベーションの活性化、企業慣行の国際標準化などに取り組んでいるアジアに関して、ひとりの人物の影響力を過大評価すべきではない。半面、バフェットのような投資家による「お墨付き」がおよぼす効果も、けっして過小評価すべきではない。
1990年代以降の韓国の歴代大統領は、韓国総合株価指数(KOSPI)を構成する自国企業がアジアの競合他社よりも低く評価される、いわゆる「コリア・ディスカウント」を終わらせると公約してきた。尹もそうだ。だが、大統領の5年の任期の2年が過ぎるなか、尹もまたこの問題を解決できないのではないかと投資家が不安視しているのにはもっともな理由がある。尹の企業価値向上プログラムは残念ながら、具体的な措置や明確なタイムラインに乏しい。