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2024.05.21 09:15

能登地震の再建にも。短工期、低コストで家が建つNESTINGの実力

自らをメタアーキテクトと名乗る秋吉は、いわゆる建築家の枠を飛び越えて、テクノロジーやコミュニティ、流通、サステナビリティなど、あらゆるものをデザインでつないでいく。

NESTINGにおいては、「建築は大変なこと」という通念を、楽しい祝いごと化し、人々が失っている“自らつくる”という力強さや身体性を取り戻し、建築と人との新しい関係性を提示する。施主が自ら建てることは、建築業界の深刻な人手不足というソーシャルイシューの解決にも一役買うことにもなる。

「友人との協働作業によって関係性が強まり、関わったことで愛着が生まれるので、友人たちがまた来てくれる。共に“場をつくる”という価値が生まれるんです。そういう意味でNESTINGは、Self-Build(独力で険しく建てる)ではなく、Co-Build(皆で愉しく建てる)です。安くするために自分で建てるのではなく、自分たちで楽しんで建てた結果として安くなるのが理想ですね」

地域の木材で、軽やかに

低価格の背景には、工法の他にもアプリによる設計や3D木材加工機「ShopBot」などのテクノロジーの活用が挙げられるが、地域の木材の活用も寄与しているという。単純にコストを下げるのであれば、安価な輸入木材を使うことが常套手段だが、「NESTINGは、軽くて弱くて薄い木材でできる工法なので、地域でとれる杉や檜で十分」なのだという。
3次元木工用切削機ShopBotで作られた壁を構成する部品。

3次元木工用切削機ShopBotで作られた壁を構成する部品。


「地域の木を使うことは輸送コストや環境負荷も減らせるだけでなく、地域経済も活性化させます。木の伐採には環境破壊のイメージがあるかもしれませんが、木はむしろある程度切った方がいい。木は炭素を固定化してくれますが、その量は年々減っていきます。例えば杉の木であれば、35年くらいで切ってしまって、新しく植えた方が炭素吸収量は増えます。地域の木を使うことは、里山の環境再生につながるんです」

季節による気温変化が激しく、地震も多い日本で懸念される機能性に関しては、「断熱性能は国内トップレベル、耐震性もしっかりと構造計算をした上でパーツ化しているので、機能や耐久性も心配はありません」という。また、もともとパーツを組み立てているため、バラして移築したり、部分的に入れ替えたり、ライフステージに合わせて大きくしたり、小さくするなども自在に変えられるという特徴もある。
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文=國府田淳 写真=楠瀬友将

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