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2021.09.09 07:30

理想の住まいは自分でつくる。VUILD「デジタル家づくり」への挑戦

VUILD代表 秋吉浩気(左)、BIOTOPE代表 佐宗邦威(右) 写真=曽川拓哉

VUILD代表 秋吉浩気(左)、BIOTOPE代表 佐宗邦威(右) 写真=曽川拓哉

すべての人を「設計者」にする。そうミッションに掲げる建築系スタートアップ「VUILD」は2019年、デジタルファブリケーションで誰もが好きな「家具」をつくることができる仕組み「EMARF」を実現した。

それから2年、その自由なものづくりを「家」にまで拡張。デジタル家づくりプラットフォーム「Nestingβ」をローンチした。Nestとは巣。つまりこれはVUILDによる「巣作り」の提案だ。

家は「人生で最大の買い物」と言われるように、 “つくる”よりも“買う”、あるいは“持つ”イメージが強いかもしれない。Nestingは、その現代の価値観をあらゆる方面からゆさぶるサービスと言える。

アプリを使って間取りを設計し、3D木材加工機で部品を揃え、家を組み立てる──。Nestingによって社会はどのようにかわるのか? VUILD代表で建築家の秋吉浩気、伴走者としてコンセプト作りや仕組み化を担う戦略デザインファーム「BIOTOPE」の佐宗邦威に聞いた。

豊かさは「自分で稼ぐ」もの


ふたりの出会いはおよそ4年前。秋吉が抱いていた、「建築を民主化する」というVUILDのビジョンに佐宗が共感したところから始まった。

「当時のVUILDは、家具づくりのクラウドサービス・EMARFの普及を考えているタイミングでした。ある一定層しかできないと思われていたものづくりを民主化していくという考えが、BIOTOPEの思想 “クリエイティビティの民主化”に近いなと感じました」

その繋がりから、秋吉がBIOTOPEのオフィスの家具をつくったり、移転時にインテリアを手掛けたり。コンセプトだけでなく“実装”までを共有しながら、佐宗はVUILDの事業拡大に並走してきた。


BIOTOPEのオフィス (c)Hayato Kurobe

Nestingの構想が具体化していったのは、昨年4月の緊急事態宣言下。きっかけは、VUILDの支援もしているMistletoeの孫泰蔵とのブレストだった。

「ステイホームと言われて僕らは巣篭もりしているけれど、その巣に“住まわされている”のではないか。本当の豊かさとは……? というような話をしたんです」と秋吉は振り返る。



岡山に住むVUILDのCOO、井上達哉の暮らしや言葉にもヒントがあった。井上は自粛期間に家のDIYをプロジェクト化し、地域の人々を巻き込みながら取り組んでいた。その彼が、「コロナで停止している東京は、田舎の暮らしに近い」と話したという。

それは、コミュニティとプロセスを楽しむということだ。緊急事態宣言下で移動や時間の自由が失われた中では、皆、家族や限られた仲間と、料理や遊びなど日常を工夫して過ごしていた。それを「豊かさを稼ぐよう」と表現した井上の言葉から、「豊かさとは、自分で稼いでいくものではないか」という考えが新たな家づくりの道標となっていった。

その考えをさらに加速させたのが、2019年に富山県に建てた宿泊施設「まれびとの家」だ。
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編集=鈴木奈央 写真=曽川拓哉

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