VUILDは2021年、家をアプリでデザインし、自分たちで簡単に建てられるデジタル家づくりプラットフォーム「NESTING(ネスティング)」を発表。22年に発表したのち、10数軒が竣工。現在、被災地でも一軒、再建プロジェクトが進行している。震災復興にも生かされうる「NESTING」の特性を秋吉に聞いた。
「実は能登半島地震で、実家の家が全壊判定を受けたメンバーがいるんです」
そう話す秋吉が手掛けるNESTINGは、平たく言えば注文住宅のプラモデルだ。工場で作られたパーツを現地に運び、自分たちで組み立てる。12坪の場合の工期は約1カ月で、総工費は約1000万円。アプリで簡単にデザインすることができ、見積もりもその場で算出される。それでいてデザイン性も高い。
避難所や仮説住宅から早く抜け出したい要望を叶えられ、被災者生活再建支援法に基づく支援と追加支援制度を合わせて最大600万円と限られた支援金のなかでの再建においては、金額的にも現実的な選択肢に見える。
実際に秋吉らが進めている“VUILDメンバーの実家”の再建プロジェクトは、大家族が住んでいた広く重厚な二階建て(全壊判定)を自費解体し、NESTINGを利用したコンパクトで軽やかな平屋を、家族でセルフビルドする。その際、解体資材はできるだけ転用する。倒壊してしまった家の大事なもの、能登の文化や歴史を継承したいという思いもあってのことだ。
「先日、模型を用いたワークショップを行い、家族に主体的に間取りも決めてもらいました。設計も施工も、住み手が主体に行う創造的復興の事例・選択肢を提示できたらと思う」と秋吉。同プロジェクトは6月には上棟する予定だという。
家を建てる楽しさを取り戻す
NESTINGは現在、能登のプロジェクトの他に10棟ほどを進行している。秋吉が綴るnoteには、香川県 直島に竣工した1軒目の家の建築プロセスが詳しく公開されている。そこには、楽しげに家を組み立てている施主や友人の写真も並ぶ。「ウエディングプランナーのように振る舞うことを意識しました。家を建てるというお祝いごとを、いかに楽しんでもらえるかに焦点を当て、演出や体験を含めた家づくりをプランニングするという感覚。実際に『結婚式のように楽しかった』と感想をいただきました」