音楽

2024.05.16 10:15

「BE:FIRST」「MAZZEL」を生んだSKY-HIが考える、理想のアーティスト像

音楽事務所BMSGの代表取締役CEOを務めるSKY-HI


特にデビューする前のトレーニーの育成は慎重に行っている。カンファレンスでは、BMSGのトレーニー第1号であるRUIの事例を紹介した。彼は2020年、中学1年生のときにBE:FIRSTを輩出したオーディション『THE FIRST』に参加し4次審査で脱落。SKY-HIは「天才で、アーティストとしてのスキルは申し分なかったが、その反面、社会的な経験が足りていないと感じた」と当時を振り返る。
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「まだ13歳なのだから経験が足りないのは当たり前。でも、プロのアーティストとしてデビューしてしまうと『若いから仕方ない』は通用しません」

デビューすると交友関係など関わる人も限られるようになり、社会を知る機会が失われてしまう。「長期的なキャリアや人生を考えたときに、13歳で急いでデビューするよりも、まずはしっかり義務教育を受けることのほうが重要」と考えて“脱落”の判断をした。

さらに、所属アーティストへの教育や研修にも力を入れる。例えば、家庭教師を招いて受験生向けの夏期講習を実施したり、JICA の職員を招いて世界で活躍するためのセミナーを開いたり。その他にも礼儀作法研修、薬物乱用防止セミナー、英語レッスン、希望者には韓国語レッスン、ジェンダー論研修などを行っている。
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なお、アーティストはデビュー後すぐに多額のお金を手にする場合もある。そんなアーティストは、金融リテラシー講座を受講させてお金の管理を学べるようサポートしている。

「アーティストは売れさえすれば良い、人気がありさえすれば良いわけでありません。小さな子どもから高齢者まですべての世代に深くリーチし、誰かの生き方や価値観にまで影響を与える可能性がある仕事。その可能性の大きさや夢と責任、両方を感じてもらいたいと思っています」と話すSKY-HI。だからこそBMSGでは“人間としての成長”を手厚くサポートしている。

また、SKY-HIはアーティストに、社会の一員として積極的に社会に関わることを奨励している。例えば国政選挙の投開票日を前に、アーティストがSNSで投票を呼びかけるといった取り組みも行った。

「彼らが社会規範にならなくてはならないというわけではありません。自分の周り、そしてその延長線上にある社会に対して、ポジティブな影響を与えられる存在あってほしいと願っています。『今日より明日、さらにもっと先の100 年後が良い世の中になるように』と考え、意識して行動する責任が、僕たちアーティストにはあると思っています」

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音楽業界の「劇薬」に。SKY-HIが起業家になった理由

文=堤美佳子 編集=田中友梨 写真提供=BMSG

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