宇宙

2024.05.06 18:30

金星探査が「地球型」太陽系外惑星を理解する鍵に

金星と地球の「姉妹惑星」合成画像(Venus - ESA, Earth - ESA, 2007 MPS for OSIRIS Team MPS/UPD/LAM/IAA/ RSSD/INTA/UPM/DASP/IDA)

実験室としての金星

今回の論文の共同執筆者で、米セントルイス・ワシントン大学の惑星科学者のポール・バーンは、取材に応じた電子メールで、地球人にとって、すぐ隣に金星があるのは極めて幸運なことで、将来到達できる見通しのある唯一の地球外大型岩石惑星である可能性が高いと指摘している。バーンによると、太陽系外の惑星系にある地球サイズの惑星は、地球から何光年も離れている。すなわち、そこに到達する手段が得られる見通しが全く立たないわけだ。
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論文の筆頭執筆者で、米カリフォルニア大学リバーサイド校の惑星天体物理学者のスティーブン・ケインは、電話取材に応じ、最初の生命誕生に適した条件がどのように得られるかを本当に理解するには、惑星の過去から現在、未来までを理解し、時間とともにどのように進化するかを解明する必要があると語った。だからこそ今回の研究では、地球と全く異なる進化を遂げている金星が、その解明の鍵を握っていると主張しているのだと、ケインは続けた。

地球とは対照的に、金星の自転周期は243地球日にも及ぶ。論文によると、金星大気は主成分が二酸化炭素(CO2)で、他に少量の窒素と、微量の二酸化硫黄、アルゴン、水蒸気などのガスが含まれている。さらに、硫酸の雲の層が金星全体を覆っているという。

金星も地球も太陽系の他の岩石惑星と同じ方法で形成されたが、なぜこれほど異なった進化の道筋をたどったのかについては謎のままだと、バーンは指摘する。
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惑星が主星に接近しすぎると、惑星と共に形成される一次大気が失われ、二次大気が形成されると、バーンは続ける。だが、主星との距離が近すぎると、惑星から二次大気も失われるという。

NASAのマリナー10号探査機が1974年2月5日に撮影した金星のクローズアップ写真(NASA)

NASAのマリナー10号探査機が1974年2月5日に撮影した金星のクローズアップ写真(NASA)

ケインによると、地球に関して最も興味深いことの1つは、約40億年もの間にわたって地表に液体の水を保持してきたことだ。これは、地球が気温の非常に狭い変動幅を維持しなければならなかったことを意味するとして、「驚くべきことだ」と、ケインは表現した。

金星の類似惑星が存在しない恒星系

もし太陽系に金星がなかったら、太陽以外の恒星の周囲で現在発見されている地球サイズの惑星群について推測されることは、想像の域を出ないと、ケインは指摘する。なぜなら、モデルでは決して金星を予測できないからだという。

地球と金星は同じ大きさで、質量も同じだが、金星に関するそれ以外のすべてのことが異なっていると、ケインは説明する。磁場が異なる、自転速度が異なる、金星には衛星がなく、自転軸の傾きが異なっている。

また、金星の自転速度が遅いことと、時間とともに変化するメカニズムに、ケインは頭を悩ませている。

ケインによると、金星の状況では、大気そのものが惑星を減速させていると今では考えられている。金星は初めから自転が遅かったとされているが、それについてはまだ分かっていないという。金星の自転速度の変化が気候の進化に及ぼしてきた影響に関しては、完全には解明されていないと、ケインは続けた。
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翻訳=河原稔

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