企業がウェルビーイングに投資しないのはなぜか
企業幹部のなかには、従業員のウェルビーイングへの投資について、ひどい思い違いをしている者もいる。シングによればその原因は、時代遅れの経営モデルに固執していることにあるという。「メンタルモデルが違う。人について考えるときに、取引としてとらえるか、ビジネスの基礎としてとらえるか、ということだ」ヘッドスペースの調査では、企業が従業員のメンタルヘルスに関するリソースに投資することで、医療費が15%削減されることが明らかになっている。また、瞑想アプリを日常的に使用している人では、使用開始から30日後に、ストレスが32%減少することもわかった。
とはいえ、そうした説得力のあるデータにもかかわらず、いまだに多くの組織では、メンタルヘルスが職場における優先事項になっていない。
「現在では、メンタルヘルス関連リソースに投資するか否かで、投資利益率(ROI)にはっきりとした違いが出ることが、多くの良質なデータによって示されている」とシングは話す。「質的な利点があることについては、誰もが概念としては認識していても、必ずしもそれで投資という決断に至るわけではなかった。いまでは、そうした質的な利点だけでなく、従業員一人につき数千ドルを削減できることも理解され始めている」