サイエンス

2024.06.13 15:00

魚はなぜ群れをなすのか? その理由がわかる5枚の写真

海は暗くて恐ろしい場所であり、単独でいるかどうかがしばしば生死を分ける(Getty Images)

広大な海の中で魚が単独行動することは稀だ。代わりに、彼らは群れをなすことで、いたるところに存在する捕食者の脅威と戦い、集団生活による集合的利益を活用する。

スクール(school)とショール(shoal)はいずれも魚群を意味する専門用語だ。スクール(school)が高度に同期され組織的に、しばしば同じ方向に近接して泳ぐグループを指すのに対し、ショールはより同期が弱いグループで、社会的利益のための集団行動はするが、必ずしも調和して移動しない。

警戒レベルの強化から採餌する機会の増加まで、スクーリング(スクールによる行動)とショーリング(ショールによる行動)は、水中世界に不可欠な生き残り戦術だ。なぜ魚たちが群れをなすのかを見事に表現した5枚の写真を以下に紹介する。

1. シンクロナイズドスイミングにはステルス効果がある

スクーリングするミナミゴンズイ。見かけによらず群れは驚くほど静かだ(Getty Images)

スクーリングするミナミゴンズイ。見かけによらず群れは驚くほど静かだ(Getty Images)

同期して泳ぐ魚の群れは、1匹だけで泳ぐ魚よりも静かだ。この直感に反する発見は、Bioinspiration & Biomimetics誌に掲載された最近の研究論文によるものだ。

ここで鍵となる要因は、同期した動き、特に尾びれを振るタイミングだ。スクールをなす魚たちが同期して動くとき、特に尾びれを同期させたときに、彼らは周囲の水の乱され方を制御することが可能になり、全体として生み出す雑音を減少させられる。これは同期して動き、個々の魚が生み出す音波を打消しあるいは減衰させることで、群れ全体の存在をより静かにすることができるためだ。

2. 大きな集団は捕食者に脅威を感じさせる

イワシは小さな魚だが、スクールを形なすることによってはるかに大きい海洋生物の形を真似ることができる。これによって捕食者を回避したり混乱させることができる(Getty Images)

イワシは小さな魚だが、スクールを形なすることによってはるかに大きい海洋生物の形を真似ることができる。これによって捕食者を回避したり混乱させることができる(Getty Images)

大きい群れの巨大なサイズは(特にスクールとなっていっしょに動くとき)、サメや大型魚などの捕食者に恐怖心を抱かせる抑止力になりうる。魚が巨大な群れをなすことで、捕食者を圧倒し混乱させる視覚効果を生む。多数の標的が移動することで捕食者は標的を絞って1匹の魚を追跡することが困難になる。この現象を「混乱効果(conusion effect)」と呼ぶ。

さらに、スクールの集団行動と協調によって、個体の集合ではなくより大きな団結したまとまりのように見せることができる。これによってスクールは捕食者にとって、1匹の魚よりもずっと大きく脅威を感じる標的に見える。その結果、捕食者は、よくまとまっていて威圧的な集団を攻撃するリスクを避け、より捕まえやすい単独行動する標的を選ぶかもしれない。この防御機構によってスクールに属した個体の生存率は高まる。
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翻訳=高橋信夫

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