同国で汚職撲滅が進められている中で、判決は異例の厳しさとなった。
不動産開発大手バン・ティン・ファット(VTP)の会長のラン被告は、2022年に逮捕・起訴された。横領した125億ドルはベトナムの国内総生産(GDP)の約3%に相当する。
判決では、ラン被告が2011〜22年にサイゴン商業銀行(SCB)を違法に支配し、この権力を利用して実態のないVTPの関連会社を通じて資金を横領し、また当局者に賄賂を贈って不正を隠蔽していたと認定した。
検察は、ラン被告と共犯者らがVTPの関連会社に数十億ドルにのぼる2500件の不正融資を行い、その結果、SCBに約270億ドル(約4兆1380億円)の損失が生じたと指摘した。
ラン被告は賄賂、横領、銀行融資規則違反の罪で有罪となった。1カ月に及んだこの裁判は国営メディアで大きく取り上げられてきた。報じられたところによると、何百人もの弁護士が関わり、文字どおり重さが何トンにもなる証拠が集められ、何千人もの証人が召喚されたという。
判決では死刑に加え、禁錮40年と2700万ドル(約40億円)の賠償命令も言い渡された。同国で詐欺や横領などで有罪となった女性に言い渡された量刑としては極めて重いものとなった。ラン被告から資金を少しでも回収しようとする試みとみる向きもある。
ラン被告は容疑を否認し、無罪を主張。被告の弁護士の1人はロイター通信に「もちろん判決を不服として控訴するだろう」と述べた。
AP通信によると、この横領事件ではラン被告のほかに85人が起訴されている。罪状は銀行法違反、贈収賄、職権乱用など多岐にわたるという。タインニエンによると、84人が執行猶予3年から終身刑の判決を受けた。
AFP通信や国営メディアによると、ラン被告は先週行われた審理での最後の発言で、自殺を考えたことがあると言及したようだ。「自暴自棄になり、死を考えた」「銀行部門という、ほとんど知識を持たない厳しい業界に首を突っ込むほど愚かだったことに憤りを覚える」と述べたという。
ベトナムでは政府が汚職の取り締まりを進めている。同国共産党のグエン・フー・チョン書記長が「blazing furnace(燃える炉)」と名づけた反汚職運動では国家主席2人をはじめ、多くの役人や官僚が辞任に追い込まれた。
BBCによると、ラン被告はホーチミン市(旧サイゴン)の中国系の家庭の出身。市場の屋台売りの事業を始め、後にVTPを設立し、1980年代の経済改革時に土地や不動産を購入した。
裁判で使われた証拠は104箱、重さは6トンにもなるとBBCは報じた。
(forbes.com 原文)