ジョー・バイデン大統領が発表したインド太平洋経済枠組み(IPEF)は正しい方向への一歩ではあるが、米国政治の全体的な保護主義化がこうした経済圏構想の有用性を低下させている。IPEFは協定というよりも交渉の約束にすぎず、バイデン政権が市場アクセスの拡大を提案する可能性は低いため、精彩に欠ける。
中国が南シナ海で攻勢を強め、好き放題ふるまっても罰されずに済んでいるのは、経済力と国の規模ゆえなのが明らかだ。したがって、その力を最小限に抑える方法は何でも検討すべきである。
軌道修正は容易ではないだろう。ウクライナ、紅海、ガザでの紛争は、米国が定義した「ポスト冷戦」時代が終焉を迎え、権威主義的大国が追求する「拡張政策」と「失地回復主義」がそれに取って代わったことを如実に示している。
米国と西側同盟諸国が国防費を増額しないのは、控えめに言っても間違いであり、最悪の場合は紛争を助長することになる。台湾を「ヤマアラシ」化するなど、より大きな敵に非対称的な手段で立ち向かう努力の支援を優先すべきだ。追加の国防予算があれば、米防衛各社は艦艇やミサイル攻撃能力を提供できる。
重大な混乱が米国と世界の経済に損害を与え、同盟国の足を引っ張る前に、米国が南シナ海の安全保障強化を主導しなければならない。ぐずぐずしたり、遅れをとったりしている時間はもうない。不愉快な現実に目覚めなければ、米国は夢遊病者のように惨事へと突き進んでいくだろう。
(forbes.com 原文)