アジア

2024.04.11 09:00

南シナ海で抑止力を失う米国 対中防衛のカギは

南シナ海紛争の経済的影響は、貿易ルートにとどまらない。この海域には膨大なエネルギー資源の可能性がある。ベトナムとフィリピンは沿岸で洋上風力エネルギー開発を進めているが、紛争の趨勢によっては再生可能エネルギー計画そのものが頓挫しかねない。海底には天然ガスや原油などの化石燃料も豊富に眠っているとされる。中国が南シナ海で攻撃的なふるまいを続ければ、これらの資源は未開発のままとなる。

米国は南シナ海問題への関与を避けているわけではない。2016年から仲裁判断の完全性維持に努め、「航行の自由」作戦や、旧敵国であるベトナムとの関係強化などを行ってきた。しかし、米国が関与する問題は世界中にあり、すでに手が回らなくなりつつある。米国単独で南シナ海問題に取り組むことは不可能だ。実際、米軍の世界的な対応力は低下しており、艦艇の展開・補修能力にも限界がある。

幸い、フィリピンとベトナムの海上協力に関する合意や日韓の関係改善など、最近の地域の動きには希望の兆しがある。特に、日韓関係の進展はきわめて重要だ。日本と韓国は合算すると世界の造船能力の46.49%を占め、ハンファオーシャン(旧大宇造船海洋)、HD現代重工業、三菱重工業など、地域を代表する艦艇製造大手がこれを支えている。中国の造船シェア46.59%にほぼ匹敵するのだ。

こうしたイニシアチブがなければ、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、台湾などは最終的に中国の威圧に屈することになろう。日本と韓国には、韓国航空宇宙産業やスバルなど航空防衛事業に力を入れている企業もあり、中国の脅威から地域を守る防衛航空機の製造能力がある。

それでも、中国の海軍力と空軍力は近隣諸国のそれを圧倒するだろう。この問題を克服する唯一の方法は、共同能力の活用であり、米国が糾合力を発揮して防衛協力関係の確実な発展をうながす必要がある。何よりも共同生産と相互運用性の最大化に重点を置くことが不可欠だ。
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翻訳・編集=荻原藤緒

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