事業継承

2024.04.21

M&Aやサーチファンドも登場。新しい事業承継100社(前編)

イラストレーション=ブラチスラフ・ミレンコビッチ/シナジー・アート

企業を取り巻く環境が激しく変化するなか、未来へとビジネスをつなぐ事業承継のあり方も多様化している。各企業が直面する経営課題に後継者たちはどんなアプローチで向き合っているのか。親族内承継だけでなく、増えつつあるM&Aやサーチファンドによる第三者承継などの事例も紹介しよう。

本企画では、中小企業を中心に100社の事業承継の事例を「家業の宝を生かす」「承継方法を学ぶ」「承継後に急成長」「組織を変える」「地域とともにつくる」「レガシー産業を変える」の6つのカテゴリーに分類。さらに、多様な承継のあり方や、承継後のビジネスの変化を示すタグを各企業名の右に記載した。

選定にあたっては、有識者や自治体などにアンケートを実施し、本企画の監修をした入山章栄教授から助言をもらい、編集部で決めた。


CATEGORY 01|家業の宝を生かす

家業で脈々と培ってきた経営資源を活かし、時代の変化に合わせて事業を展開する。新規事業だけでなく、ビジネスモデルそのものを変えたり、新たな出島型組織をつくったりして社会のニーズに応えていく。

カスタムジャパン 第二創業|業態転換 

代表者|村井基輝 設立年2005年
「ベンチャー型事業承継」名付け親。祖父が創業したバイク部品商の3代目として、ITベンチャー役員を経て、家業に入る。先代からバイク部品の仕入れのノウハウを受け継ぎ、村井氏自身がカスタムジャパンを創業。全国に向けてモーターパーツの販売事業を手がけ、バイク部品の自社ブランドも展開。100万アイテムを扱うまでに成長。

ミツフジ 第二創業|業態転換 

代表者|三寺歩 設立年|1956年
西陣織の帯工場として1956年創業し、機能性繊維を開発してきた老舗繊維メーカー。3代目の歩氏は、松下電器産業(現パナソニック)やシスコシステムズ、SAPジャパンなどを経て2014年9月に家業を継承。導電性繊維AGpossに特化したビジネスモデルに移行し、廃業寸前であった同社をウェアラブルIoT企業へと生まれ変わらせた。

オータマ 第二創業|技術革新 

代表者|奥村哲也 設立年|1964年
外部からの磁気を遮蔽する特殊装置「磁気シールド」を製造。科学技術の進化に伴い需要が減り、競合他社が次々と撤退し始めていた2008年、先代の娘婿にあたる奥村氏が入社。停滞していた製造技術の更新に挑み、販売価格を従来の10分の1まで下げると同時に、少量生産に対応するシステムを独自で構築。現在国内シェアの7割を占める。

リゲッタ EC|ブランディング 

代表者|高本泰朗 設立年|2006年
泰朗氏は、実父が設立した履物製造業のタカモトゴム工業所を2010年に承継。家業はもっぱら靴製造の下請け業であったが、売り上げがゼロになったことをきっかけに自社製品の開発を開始。女性向けのコンフォートシューズ「リゲッタ」が通販業界でヒットして靴メーカーとしての地位を獲得。事業転換に成功した。

シンワ 新規事業|ブランディング 

代表者|村上卓也 設立年|1974年
工場で使用される工作機械部品や輸送機器のモーターシャフトなど専門性の高い金属切削加工技術をもつ町工場の2代目・卓也氏がアウトドアブランド「muraco」(ムラコ)を立ち上げる。「黒いテント」などの独創的な商品が評判を呼び、2022年には東京に直営店を開くなど、BtoBのみの町工場からBtoCビジネスも展開するブランド企業へと変貌を遂げた。

アチハ 第二創業|業態転換 

代表者|阿知波孝明 設立年|2000年
電車の車両やテーマパークの遊具など超大型重量物の運送業を営む。バブル期の過剰な設備投資で経営難に陥っていた2006年、実父から前身となる阿知波組を引き継ぎアチハとして再スタートを切る。寝食を惜しんで再建に励み、既存事業の拡大に加え、風車の輸送・設置までを一貫して担う風力発電業も手がけたことで家業を再生させた。

ハンワホームズ 新規事業|EC 

代表者|鶴 厚志 設立年|1994年
植栽やウッドデッキ、門扉など建物の外構工事で創業。創業者である実父の急病に伴い入社した2代目社長が新たにECサイト事業を導入し、既存事業に小売りビジネスを加えることで事業を拡大。一般戸建て住宅や商業施設に設計提案を行う「屋外空間創造事業」と、国内外の屋外家具の販売を行う「DEPOS事業」を展開している。

KTX 新規事業|組織改革 

代表者|野田太一 設立年|1975年
仏具の製造会社として創業し、半世紀にわたり電気鋳造の分野で貢献。陸上自衛隊、形成外科医を経て2代目社長に就任した太一氏が「じゃない方事業部」を立ち上げ、蓄光製品や止水板、デジタルサイネージなど新商品で事業を拡大。製品開発にとどまらず、日課だった朝礼の廃止や休日の確保、業務の機械化など社内改革も実施している。

ホリタ 第二創業|業態転換 

代表者|堀田敏史 設立年|1994年
1950年に福井県内に6店舗を展開する文具店として創業。証券会社勤務を経て2008年に入社した創業家3代目が14年に社長に就任。業務改善とともに「エンターテイメント・カンパニー」へと転換し、文具のみならず雑貨や知育玩具、キッチン用品など商品展開をすることで赤字経営から脱却した。中小企業庁主催の第2回アトツギ甲子園で最優秀賞。

白神商事 プラットフォーム|課題解決型 

代表者|白神康一郎 設立年|1957年
瓦をはじめとする各種屋根資材と、太陽光発電システムの卸販売を手がける。野村證券で法人営業とM&Aのアドバイサーを務めた3代目社長が、新規事業としてユーザーと屋根専門の工事会社のマッチングサイト「やねいろは」や壁工事専門の「かべいろは」の運営を開始。家業のノウハウを生かし、さまざまな事業展開を行っている。
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この記事は 「Forbes JAPAN 2024年4月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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