事業継承

2024.04.21 12:00

M&Aやサーチファンドも登場。新しい事業承継100社(前編)

Forbes JAPAN編集部

鹿島精機工業 サーチファンド 

代表者|中島祐 設立年|1962年
2023年サーチャーだった中島氏がサーチファンドを運用するGrowthix Investmentを通じて同社と出合い、4代目として承継。親族以外では初の継承。エアコン内部の金属部品「バルブプレート」を手がけ、世界シェアは約3割。年間売上高14億円。中島氏はオムロンやミスミグループ、ニトリホールディングスなど7社で経験を積んだMBA保有者。

万葉建設 M&A|異業種承継|多角化 

代表者|佐々木俊一 設立年|2005年
事業建設や公共工事を主とする建設会社だが、M&Aで異業種買収を手がける。2021年、映像制作を手がけるスタジオスリーエイトとサンパチクリエイティブと業務資本提携を結び、映像制作事業の経営にも乗り出した。本業とは異なり、事業のノウハウももたない会社も買収。PMI(統合業務)の成功事例。地場の建設業では珍しい。

ハシダ技研工業 従業員承継|M&A 

代表者|吉岡亨浩 設立年|1967年
2代目社長の亨浩氏は工業高校を卒業後、溶接技術者として入社。創業者の橋田寛会長から承継した。M&Aでの買収に積極的に取り組み、2008年から22年までに後継者不在の製造業を中心に計25社を譲受。グループ売上高200億円を超え、従業員数は1,000人超に拡大。創業時からの金型設計・製造技術を強みに多様な業界をカバーする。

DENZAI M&A|海外展開 

代表者|上村浩貴 設立年|2015年
クレーン会社の2代目、浩貴氏。先代から国内では業界2位だが、シンガポール国内トップ5のクレーン企業など国内外でM&Aに積極的に取り組み、海外事業を中心に急拡大する。製鉄所や石油化学プラントなどの大型改修工事やダム建設工事などに取り組んできたが、近年は国内外で風力発電所の建設に注力し、シンガポールなどに海外拠点をもつ。

おやつカンパニー M&A|海外展開 

代表者|横山正志 設立年|1948年
「ベビースターラーメン」や「ブタメン」など麺類加工スナックの製造販売。創業家2代目社長がグローバル展開を強化するため、親族内継承ではなく、2014年に外資系ファンドのカーライル・グループを筆頭株主に。経営体制を刷新して海外売上げを3倍にした。22年末、カーライルは国内ファンドへ売却。デジタル強化によるさらなる成長を狙う。

寛一商店 M&A|全国展開型 

代表者|瀬川安紀子 設立年|2012年
1990年代に医薬分業が提唱されて多くの薬局が誕生したが、その経営者たちが引退する年齢となり、後継者不足が表面化。M&Aが活発化する。2014年に京都で第一号店を構えた「なぎさ薬局」は、小規模なM&Aを繰り返して北海道から九州まで50店舗以上に拡大。グループ会社では、サービス付き高齢者向け住宅の福祉事業も展開する。

地球の歩き方 第三者承継|大企業による救済 

代表者|新井邦弘 設立年|2020年
1979年創刊の海外旅行ガイドブックブランド。2020年、新型コロナ禍に海外渡航の自粛要請の影響を受け、売り上げが前年比9割減にまで落ち込んだ出版元のダイヤモンド・ビッグ社から、出版・教育大手の学研グループがブランドを事業継承。同HDグローバル戦略室に所属していた新井氏が新会社の社長に抜てき。ブランド消滅の危機を乗り越えた。

熾リ 第三者承継|ファン 

代表者|前川拓史 設立年|2021年
タウンユースから本格登山まで幅広く愛用される「神戸ザック」を販売するアウトドアブランド。1971年に創業した星加弘之氏が高齢化に伴い廃業を検討した際、同ブランドのファンでありセレクトショップを展開する「ワークトゥギャザーロックトゥギャザー」の前川社長が継承者に立候補。2020年に事業継承が成立。ファンが自ら承継する珍しい事例。

ソリッドソニック 第三者承継|社外人材 

代表者|久保貴弘 設立年|2008年
難聴者向けの特殊なイヤホン「Vibone(バイボーン)」を扱う骨伝導技術の研究開発で知られる。創業者の高齢化に伴い、神戸市産業振興財団を通じて社外に後継者を募ると、事業継承に関心をもっていた現社長と意気投合。18年勤務したパナソニックを退職し、2020年に承継。クラウドファンディングなどを活用し、存続の危機からV字回復させた。

IKEUCHI ORGANIC 従業員承継|ブランディング 

代表者|阿部哲也 設立年|1969年

今治のタオルブランド「IKEUCHI ORGANIC」を展開。2016年、創業家2代目社長だった池内計司氏の療養を機に、現社長が事業継承。阿部氏は証券会社やアパレル業を経て09年にアルバイトとして入社し、15年から営業責任者を務めていた。カリスマ経営者として注目された池内氏は子に継がせるつもりはなく、実は阿部氏を次期候補として採用していた。
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この記事は 「Forbes JAPAN 2024年4月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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