1週目は、家族全員に「家庭のルール」を発表
では、どのように子どもを再登校へ促していくのか。スダチのサービスでは、最初に不登校家庭の状況をヒアリングする。そして保護者には、1週目に家族全員に向けて、「家庭のルール」を発表してもらう。2週目以降は子どもの変化を保護者がスダチへメールで報告し、サポーターからアドバイスを受けて子どもの褒め方などを変えていく。3週目に登校日を決めて再登校を目指す。
1週目に設定する「家庭のルール」はシンプルで、起床時間と就寝時間を決めること、家族で一緒に食事を取ること(なるべく3食)、「食べ終わった食器は下げる」など家事の一部を家族全員が担うこと。そして、デジタル機器の使用をやめることだ。とはいえ、親子関係が破綻している家庭では、家族で食事の席に着いたり、デジタル機器の使用をやめたりすることが難しいケースもある。
「デジタル機器の使用をやめさせることに不安を感じる家庭もあります。時には一時的に子どもが暴れて対処できない状況に陥りますが、耐える。一生使えなくするわけではありません。もし子どもが反発するようなら、『やるべきことをやればいいじゃない』と伝えてもらいます」
デジタル機器が使えなくなると子どもはやることがなくなり、だんだんと保護者に反応を示すようになっていくという。この雪どけにかかる時間はサポート開始から1週間ほど。そこから次のステップに進めていく。
面談などのやりとりはすべてオンラインで完結。保護者とだけやり取りするため、子どもたちは、サービスを利用していることすら知らないことがほとんどだ。
「子どもの居場所は学校と家庭です。どちらかを円満にすれば子どもはエネルギーを蓄えて登校できるようになりますが、学校を円満にするのは時間がかかるし難しい。であれば家庭に目を向けるべきです。家庭を変えるためには保護者の協力が不可欠で、だからこそ私たちは保護者へアプローチしています」
小川が実際に目にした不登校家庭では、中高生になっても保護者が子どもの行く準備をしてあげたり、靴下を履かせたりしていたという。甘やかしと愛情──。スダチは、まずその違いから細かくアドバイスする。
甘やかしとは、子どもを保護者に依存させる行為。愛情とは、子どもを保護者から自律させる行為と説く。不登校の子どもがゲームをやり続ける暮らしは、保護者がいないと成立しないので甘やかしだ。
スダチを利用した保護者のアンケートを見ると「甘やかしと優しさの違いが理解できた」「ダメなことはダメと言えるようになった」という声が多数寄せられている。
実際にスダチを利用した不登校の子どもの再登校率は約9割。再登校に至る日数は最短で1日、平均日数は17日となっている。再登校は学校の時間割通りに登校できた時にカウントしているため、できなかった1割には保健室登校や短時間の登校も含まれる。
スダチの支援サポートについては、明治学院大学心理学部の小野昌彦教授とともに効果を検証中で、2024年度中に論文にまとめ発表される予定だ。
「スダチのサービスが広がれば、世の中が変わると信じています。子どもたちの未来が失われないような機会を作っていきたい」
現在、スダチを利用して再登校を目指す家庭は全国で約200組。社会の風潮と逆を行くような取り組みでもあるが、同社が提供するサービスの仕組みは、子どものみならず、保護者、そして家庭を変えていく。