フランスの法人類学者で、アドルフ・ヒトラーの歯を含め数多くの歴史的遺物を研究したパリ・サクレー大学のフィリップ・シャルリエは、武帝が実際にどんな顔をしていたかを正確に知る術はないが、頭蓋骨は復顔における最も重要な要素の1つだと話す。頭蓋骨に基づく頭蓋顔面の復元は、信頼性が高く、効率的なのだという。
DNAは容姿の詳細を補足する情報を提供するが「それらの要素は純粋に統計的であるため、確信を持つことはできず、少なくとも決定的なものではありません」と、シャルリエは話す。それでも、顔の復元技術は過去10年間で進歩を遂げ、今や「その作成プロセスにコンピュータ技術者や人類学者、古病理学者などの専門家が加わることで、信頼性はきわめて高くなる」と付け加えた。
武帝の骨から抽出したDNAは、容姿だけではなく彼が36歳という若さで死亡した理由を示す手掛かりも提供している。考古学者の間では、彼が病気で死亡したという意見もあれば、敵に毒殺されたという意見もある。
今回の研究に参加した研究者らは、計698個の一塩基変異を発見し、うち42個が痛風、慢性リンパ球性白血病、脳卒中の発病率を増加させるものだったという。ただし、この裏付けにはさらに詳細な研究が必要だと研究者たちは付け加えた。
武帝がどのように死んだかの確信は持てないものの、研究チームは、武帝の突然死は少なくとも部分的には脳卒中が原因だったのではないかと仮定している。これは、武帝が失語症と眼瞼下垂(まぶたが下がってきて見にくくなる病態)を患い、不規則な歩行をしていたという文献とも一致している。
本研究はDNAの分析が過去への扉を開く新たな一例となった。「私はDNAの研究を強く支持します」とピアースはいう。「それは、歴史的な事柄の解明を含むさまざまな点においてとても重要な研究なのです」
(forbes.com 原文)