経営コンサルタント会社アーサー・D・リトルが発表した報告書によると、世界の大企業の最高経営責任者(CEO)たちはAIを受け入れ、新技術を活用するために必要なスキルを社員に身につけさせるために投資している。報告書の著者たちは、AIの使用が過去1年間で劇的に加速し、経営幹部の96%が組織の少なくとも1部門でAI戦略を実施しており、47%がAIに対して戦略的な見方を持っていると述べている。
しかし、会社全体の包括的なAI戦略を採用しているのはわずか13%であり、まだAIの影響を完全に理解し、組織全体に統合するための「変革の道」の途上にあることを示している。「私たちの経験では、AIから完全に恩恵を受けるには、大幅な構造的および労働力の変化が必要であり、これは時間をかけてのみ達成可能だ。戦略的な見方から戦略への移行、そしてその実施には大きな課題がある」と彼らはその報告書「Positive In An Uncertain World: Confident CEOs Reskill Companies For AI-Driven Growth(不確実な世界でも前向きに: 自信に満ちた CEOがAI 主導の成長に向けて企業をリスキリングする)」の中に書いている。
アーサー・D・リトルの分析によれば、CEOたちがAIをどのように使用しているかといえば、自動化などによって効率性と有効性を高め、基幹業務を改善することに主に注力しているようだという。7分野中4分野で、効率化が主要なユースケースとなっているが、これは企業がAIの導入の比較的初期段階にあることを示している。
しかし、AIはまだ企業構造を変えていないとしても、成功に必要なスキルには早くも甚大な影響をおよぼしている。AIから最大限の成果を得るためには、CEOたちは従業員を変革する必要があると信じている。その50%以上が、従業員のスキルアップを強く、あるいは非常に強く望んでいて、これは2023年のわずか13%から増加している。さらに、新しいスキルを獲得するには、従来のようなアプローチはあまり適切ではないという認識が広まっているようだ。
報告書によると、2023年には、新しい能力や人材を求めてヘッドハンターや大学との連携といった外部資源に頼っていたとCEOたちは回答していた。だがこの1年で焦点は変わり、人材とスキルを提供するために社内の教育プログラムに注目する割合が最も多くなった。このトレンドを後押しする要因は複数考えられるが、鍵となるのは、世界的なスキル不足の中でAI人材の獲得が困難であることだ。それだけでなく、効果的な成果を出すためには、技術的知識をその企業や目標に合わせて調整していくためのビジネス理解が必要であることに気づいたためだと考えられる。