働き方

2024.03.15

かつての「顧客」が「同僚」に。共感採用がもたらす大きな効果

企業理念への共感や製品に対する愛着が、幸せな採用に結びつく。地方企業の採用難を解決する可能性も。マクアケ創業者による好評連載第39回。


「共感採用」という言葉を初めて聞いたとき、とても良い概念だなと思った。共感採用とは、企業の理念やビジョン、製品やサービスに対して、自分もその一翼を担っていきたいという「共感」を軸に働く会社を選び、また選ばれるという考え方だ。仕事を通じて自己実現を図っていきたいという考えが深まれば深まるほど、定量的な条件面だけでなく、精神的な充足をも求めるようになるのは自然なことである。

企業活動においてもSNSや動画などの発信手段が手軽になったことで、自社の考え方やそれに基づく取り組み、プロダクトへの想いなどをダイレクトに顧客に発信しやすくなり、精神的なつながりを濃くしやすくなってきている。

最近、Makuakeを利用しているプロジェクト実行者である企業と話をしているなかで、まさに、この顧客とのつながりによる共感採用にこそ、地方企業の課題を解決できる可能性を感じた。

内田縫製(岡山県)というジーンズの縫製会社がある。創業55年の老舗で、山に囲まれた場所にオフィスと工場を構える優良なモノづくり企業だ。国内外のブランドからの発注でジーンズを製造することが多いが、Makuakeで5000万円超の応援購入を集めた「レインボーデニム」という自社オリジナルのヒット商品も生み出すなど、チャレンジングな企業である。

ある日、同社創業家の内田泰造氏と話をしていると、急に目を輝かせながら「Makuakeでレインボーデニムを応援購入してくれたお客さんが、うちに入社を決めてくれたんです! しかも2人も! そのうちのひとりは県外から岡山に移住までしてくれました」と教えてくれた。このコラムを通じて何社もご紹介してきた通り、地方には素敵な会社が多い。しかしながら、皆さんが口を揃えて言うのは「地方企業は採用が本当に難しい」ということだ。

特に優れたモノづくり企業においては、オフィスや工場が駅から離れていることも多く、その駅も商業施設が充実していないことがほとんどだ。地元に残る若手も少なく、たったひとりを採用するために数百万円という高額な採用コストを捻出しなければならない場合もある。これは都心以外のどの地域にも共通していた経営課題である。
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文=中山亮太郎 イラストレーション=岡村亮太

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年4月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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