アジア

2024.03.27 08:00

中国企業が「オープンソースの半導体」を強化、禁輸に対抗で

Getty Images

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香港の不動産開発会社、恒基兆業地産(ヘンダーソン・ランド・デベロップメント)の共同会長である李家傑が共同創業したチップ設計のスタートアップ上海Starfive Technology(上海スターファイブ・テクノロジー)は、香港に研究開発センターを設立し、地元の半導体産業を後押しする計画だ。

上海に本社を置くスターファイブは、オープンソースのアーキテクチャの「RISC-V(リスクファイブ)」をベースとした半導体を開発している。RISC-Vは、支配的なインテルのx86や英国のArmのArmアーキテクチャに代わる自由なアーキテクチャとして知られている。

スターファイブは3月22日、研究開発施設を設立するためにXfusion Digital Technologies(エックスフュージョン・デジタル・テクノロジーズ)と提携すると発表した。エックスフュージョンは、2021年に中国のファーウェイが設立したサーバー事業会社だが、その後、国有企業である河南信息産業投資(Henan Information Industry Investment)を含むコンソーシアムに売却された。

このパートナーシップの下、スターファイブはエックスフュージョンのサーバーに搭載される新たなデータセンター用チップも開発する。スターファイブは、投資額の公表を避けた。

「このパートナーシップは、データセンター分野におけるRISC-Vの重要なブレークスルーを加速させるだけでなく、オープンソース半導体のエコシステム構築をさらに促進することになる」と恒基兆業地産は述べている。

2018年に設立されたスターファイブは、海外の技術に頼らないチップの開発のためにRISC-Vに賭けている中国企業の1つだ。中国企業は近年、米国主導の禁輸措置によりx86とArmにアクセスできなくなっている。そこで、スイスの非営利財団が主導するRISC-Vが、中国のチップ企業の選択肢に浮上した。アナリストは、このアーキテクチャがオープンソースであるため、制裁の影響を受けにくいと述べている。

スターファイブは、データセンターや機械学習、モバイル機器、自動運転などの分野に応用可能な、世界最高性能のRISC-VベースのCPUを開発したと主張している。同社は、設立以来10億元(約208億円)以上を調達したと述べている。スターファイブの出資元には、中国の検索エンジン大手のバイドゥやSBVA(旧ソフトバンク・ベンチャーズ・アジア)、中国の投資ファンドChengwei Capitalなどが含まれる。

スターファイブとエックスフュージョンの提携は、香港が人工知能(AI)の急速な発展による半導体ブームに追いつこうとしている中で実現した。香港当局は、半導体技術の研究開発に特化した研究所を設立する計画だと述べていた。この動きは、欧米諸国からの輸出規制強化に対抗するため、独自のチップ開発を強化しようとする中国政府の努力に沿ったものだ。

香港を拠点とする数少ない半導体スタートアップの例としては、Atom Semiconductor Technologies(アトム・セミコンダクター・テクノロジーズ)が挙げられる。ペンシルベニア大学で博士号を取得した香港科技大学の電気工学教授、ジョージ・ユアンによって設立された同社は、2022年のフォーブスの「Asia 100 to Watch(アジアで注目すべき100社)」に選ばれていた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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