経済

2024.03.04

米中分断で得をする日本企業 対中米の輸出が大幅増

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見たところ、日本は依然として米国の盟友だ。軍事面だけでなく、テック分野で中国の躍進を抑制しようとする米国の取り組みにおいてもそうだ。たとえば、日本は東シナ海の無人島群の領有権争いで中国の主張を拒んでいる。それどころか、日本は台湾の防衛に米国よりも積極的に関与している。

岸田文雄首相は、中国がレアアース(希土類)の生産をほぼ独占している状態を打破すべく、先進7カ国(G7)の結束に努めてきた。テック分野で中国への禁輸措置を取った米国にも同調している。だが、統計からは別の実態が浮かび上がってくる。経済面で拡大する米中の分断の隙間に割って入ることで、日本企業が目覚ましい利益を上げていることがわかる。

輸出の数字を見れば一目瞭然だ。財務省の貿易統計によると、日本の輸出は急増している。直近のデータでは、1月の輸出額は前年同月比約12%増の約7兆3300億円だった。対米輸出は同約16%増と平均を上回り、一方で対中輸出は同約30%増と対米よりも伸びた。対中輸出の増加を牽引したのは主にコンピューターチップや半導体部品、半導体等製造装置、輸送機械などで、多くは米国が中国への輸出を禁じている物品だ。

たしかに日本は、中国への技術輸出の制限を求める米国の圧力に屈した。外国為替及び外国貿易法(外為法)を改正し、半導体製造装置23品目の輸出を禁止。これには洗浄や露光の装置など、先端半導体の生産に不可欠な多くの技術が含まれている。

だがデータによれば、日本は約束したような積極的な行動を取っていない。日本の技術の多くは明らかに中国に流れている。在中国の日系企業で組織する日本人商工会議所「中国日本商会」が最近実施した調査結果からは、さらに複雑な状況が見えてくる。調査対象となった企業の半数以上が、過去1年間に中国への投資を増加させたか、維持している。日本企業が米中分断の隙を利用しているのは明白だ。

対米輸出の増加は、かつて中国が米国に輸出していた物品が日本産に取って代わられていることを示唆している。もちろん、この点に関して日本ができることには限界がある。米国が通常中国から輸入している労働集約的な低価値品の多くは、日本では生産していない。また、アップルなどの米企業が中国で行っている組立作業の多くも、日本で肩代わりはできない。

にもかかわらず日本の対米輸出の伸びが輸出全体の伸びを上回っていることから明らかなように、高関税をはじめ中国製品を排除する米政策や、サプライチェーンを中国一辺倒から多様化する米企業の取り組みによって、米国から遠ざけられた中国製品の代わりを日本製品が努めている。

米中分断を好機とみるような動きを自制するよう、米国が日本に圧力をかける気配はない。それはまだ先のことかもしれない。日本が中国に輸出する技術が何であれ、中国が先端技術製品を生産できないようにしようとする米国の取り組みを何らかの形で阻んでいる。

このような日本の日和見的な動きが大きくなれば、米政府は阻止すべく何らかの圧力をかけるだろう。そして歴史に照らせば、日本は米国の圧力に屈することが予想される。だが、今のところ動きはない。その間、米企業の犠牲を尻目に日中は利益を得ている。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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