だが、本当に懸念されるのは、かなりの規模の公共投資が現在の成長を牽引していることだ。モディ政権は先月、来年度(2024年4月ー25年3月)の資本支出を前年度比で約11%増やすと発表した。すでに前年度に33%増やした上でだ。
こうした状況から、元インド政府主席経済顧問のアルビンド・スブラマニアンは、GDPに関する最近のデータを「まったくもって不可解だ」と感じている。スブラマニアンは先日開催された英語週刊誌インディア・トゥデイ主催のカンファレンスで、数字に「納得がいかない」と述べた。
その根拠として、スブラマニアンは「政府が発表している期待インフレ率は1〜1.5%だが、実際には3〜5%程度」であることを挙げた。「個人消費は3%増にもかかわらず、経済成長率は7.5%だ」とも指摘した。
「数字に関して理解できないことがたくさんある」「こうした数字が間違っているとは言っていない。それは他の人が判断すること」とも語った。
スブラマニアンが重要だと考える判断材料のひとつは、株式市場への資金流入が増加している一方で、工場への長期投資は概して増加していない点だ。「外国直接投資は実際にはかなり減少している」とスブラマニアンは指摘している。
これは大事なポイントだ。いわゆる「ホットマネー(短期資金)」が現在インド市場に押し寄せているのは結構なことだ。しかし本当に重要なのは、雇用を創出し、インドに長期的に関与し続ける実店舗を建設する資本だ。
インドの成長が公共部門より民間企業の力によるものだと投資家が確信するまで、同国のGDP動向については議論の余地が残るだろう。民間セクターの発展が騒がれる割には、主に経済成長を支え続けているのは公共投資だ。
インドと中国に共通しているのは、金融システムの脆弱な部分から目をそらすようなマクロダイナミクスがあることだ。急激な成長が偏らないよう、モディ政権はセクター間の競争を公平にするための改革に真剣に取り組む必要がある。
世界の投資家がインドに懐疑的な目を向ける正当な理由はこれだ。そして、日経平均が1989年につけた市場最高値を超えて上昇している日本にも、同じことが言える。また、米経済を再び偉大にしたというトランプの主張に対してもそうだ。
ともかく、モディはインドの真の経済成長が遠ざかり手遅れになる前に、見せかけと現実のギャップを埋めなければならない。
(forbes.com 原文)