ヘルスケア

2024.03.26 13:00

全世界で進む「高齢化」 各国で対策を共有する動きも活発に

アイアンガー博士は、このデータベースから得られた洞察について、こう語っている。「これらのさまざまな計画を分析するなかでわかったのは、アンティグア・バーブーダやバルバドス、エジプト、アイルランド、ヨルダンなどの国々が、自国の計画を立案する際の手本として、オーストラリア、カナダ、チリ、クウェート、マルタ、ニュージーランド、サウジアラビア、シンガポール、ウェールズといった他の国や地域の計画を参考にしているケースがあるということだ」

アイアンガー博士の話は、世界の国々がお互いに学び、ベストプラクティスをそれぞれの状況に当てはめて活用する機会を得る可能性があることを裏づけるものだ。数々の調査結果が示してきたように、自国の高齢者向けサービスの提供範囲やアクセスのしやすさ、価格の手ごろさにまつわる格差を埋める対策に関しては、米国にも、他国の医療制度から学ぶ機会が存在する。少なくとも世界の国々は、それぞれが抱える問題を比較し、違いを自覚することができるはずで、これによって改善すべき部分を見定め、欠けている部分を補い、異なる文化的視点から高齢化問題を捉えることができるだろう。

ある地域が特定の問題にどう対処したかを検証することで、他地域での前向きな社会的変化に結びつけることができるケースもある。こうした例の1つが、高齢者たちに、地域活動への参加を勧める「社会的処方(social prescribing)」の取り組みだ。

社会的処方では、高齢者に地域社会の活動への参加を促すことで、これらの人々の心身の健康や社会的福祉を向上させることを目指している。社会的処方の活動の例としては、美術やダンスの教室、地域内でのスポーツ大会、自助ネットワークの形成、料理教室、自然の中を歩くハイキング、ボランティア活動、ガーデニング、地域食堂プログラムなどがある。

英国ではすでに一般的になっているこの手法は、米国でも盛んになってきており、2024年3月には、米国では初の「社会的処方デー」が設定された。こうした活動が、米国の複雑な医療システムに変革をもたらす可能性に、思いをはせてほしい。なぜなら、旧来の医療のみでは、すべての問題は解決できないし、またそうするべきでもないからだ。
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翻訳=長谷 睦/ガリレオ

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