働き方

2024.01.03

65歳過ぎても現役 退職を遅らせる米国人が増加

Getty Images

米国では、高齢者が労働市場にとどまる傾向が強まっている。米世論調査機関ピュー・リサーチ・センターは先月、米国で65歳以上の労働者の数が過去35年間でほぼ倍増したとの調査結果を公表した。昨年は65歳以上の米国人の約5人に1人が雇用されていたという。

過去数十年と比較すると、高齢者の労働時間は伸び、賃金も高くなっていた。高齢労働者の62%が正社員で、1987年から15%増加。65歳以上の一般的な労働者の時給は当時13ドル(約1850円)だったが、2022年には22ドル(約3120円)となった。米退職者協会(AARP)の報告によると、定年退職年齢の労働者の平均所得は2019年時点で7万8000ドル(約1100万円)で、1985年から63%増えた。

熟練労働者は労働力の拡大に大きく貢献してきた。専門家は、労働力人口に占める高齢労働者の割合は今後も増加し続けるとみている。米労働統計局は、高齢労働者が労働者人口全体に占める割合は、2022年の6.6%から2032年には8.6%になると予測している。

人々は、精神的な活力や経済的な安定を保つために退職を遅らせている。平均寿命が延び、物価が高騰する中、長生きして資金が尽きることを恐れるのは無理もない。高齢労働者の雇用が拡大する一方で、所得格差や職場での年齢差別など、課題も残っている。だが、50歳以上の求職者を考慮する雇用主が増えるなど、改善の兆しもある。

以下に列挙する熟練労働者の資質は、企業の成功に大きく貢献し、多様で効果的な労働力を生み出すのに役立つだろう。

・経験と専門知識

高齢労働者が職場にもたらす豊富な経験や専門知識は、さまざまな役割で貴重なものとなる。熟練労働者の多くは、何十年もかけて技術を磨き、自身の専門分野を深く理解してきたからだ。

・信頼性と労働倫理

高齢労働者は仕事に対する強い倫理観や信頼性、専門家気質を持っていると言われる。定時に出勤し、休みが少なく、頻繁に転職することもない。つまり、安定した、献身的な労働力になり得るのだ。

・ソフトスキルとコミュニケーション

高齢労働者は、専門家気質や文書による伝達、分析能力や対人能力といったソフトスキルが十分に発達している。効果的な共同作業や情報の流れに不可欠な、職場内の他者との意思疎通にも長けていることが多い。

・後輩の育成と知識の伝達

高齢労働者は後輩を育成し、技術を移転する上で極めて重要な役割を果たす。組織の知識や問題解決能力、成功事例を伝達し、同僚の職業上の能力開発に貢献することができる。

・仕事への満足度

ピュー・リサーチ・センターによる過去の調査からは、高齢労働者の仕事への満足度が高いことが分かっている。高齢労働者は仕事が楽しくて充実していると答える傾向が強く、ストレスを感じることは少ない。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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