東京を拠点とするTerra Drone(テラドローン)は、米メリーランド州シルバースプリングを拠点とするAloft Technologies(アロフト・テクノロジーズ)に大規模な投資を行い、筆頭株主となったことを日本時間3月20日に発表した。
低高度の空域を飛ぶドローンやeVTOL(垂直離着陸機)などが増加するにつれ、空域の安全性や効率性を実現するグローバルなUTMシステムの開発が急務となっている。これらの機体は通常、民間航空機よりもはるかに低い高度を飛行している。
「例えば、人口密集地の上空では、安全性を確保するために様々な制限があります。しかし、UTMのようなシステムがあれば、その安全性を確保した上で目視外飛行やよりリスクが大きいエリアでの飛行が可能になるだけでなく、デジタル化や自動化が促進され、適切に管理することができるようになります」とテラドローンの執行役員、植野佑紀氏はインタビューで語った。
今回の出資でアロフトの取締役に就任した植野氏は、Joby Aviation(ジョビー・アビエーション)やArcher Aviation(アーチャー・アビエーション)などの企業が2028年のロサンゼルス夏季オリンピックに合わせてAAM(アドバンスド・エア・モビリティ)サービスの開始を計画していることから、UTMといった運航管理を支援するシステムの進化は急務になっていると指摘した。
アロフトは、ボーイングのコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)や米国の保険大手トラベラーズ・インシュアランスからの出資を受けた企業で、連邦航空局(FAA)認定のUTMのトッププロバイダーとして知られている。
「アロフトはこの市場で80%以上のシェアを誇っており、米国においてトップ企業と言えるでしょう。15人程度の企業ですが、創業者らは大きなビジョンを持っています」と植野氏は説明した。
アロフトへの投資は、世界的なUTMを構築するというテラドローンの最終目標に沿ったものだ。テラドローンは昨年、ベルギーを拠点とするUTMプロバイダーのUnifly(ユニフライ)を子会社化していた。
植野氏によると、欧州の27カ国ではUTMの導入が規制により義務化し、米国においてもドローンのための運航管理システムの進化や標準化が期待されている。
米連邦航空局(FAA)は昨年7月、2028年の夏季五輪までに高度な航空モビリティシステムを実現することを目的とした、Innovate28と呼ばれる航空モビリティ実施計画を発表した。
2016年にUTMの開発を始めたテラドローンは、産業分野ではドローンを使った測量や点検などのソリューションを世界のエネルギー大手などに提供している。同社は昨年1月にはサウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコの投資部門ワエドから18億5000万円を調達していた。
世界トップ2のドローンサービス事業者の1つであるテラドローンが、米国市場に参入するのはこれが初めてだ。FAAのデータによると、現在、米国では日本の約2.4倍となる台数のドローンが登録されており、今後の数年でさらなる増加が見込まれている。
「米国は世界最大級の市場です。だからこそ、私たちは常に米国市場に参入したいと考えていました」と植野氏は語った。
(forbes.com 原文)