スポーツ

2024.01.14 14:00

新たなスポーツの担い手ドローンレーサー。彼女はなぜ競技の世界に挑んだのか

Forbes JAPAN編集部

白石麻衣

あらゆる職業を更新せよ!──既成の概念をぶち破り、従来の職業意識を変えることが、未来の社会を創造する。「道を究めるプロフェッショナル」たちは自らの仕事観を、いつ、なぜ、どのように変えようとするのか。『転職の思考法』などのベストセラーで「働く人への応援ソング」を執筆し続けている作家、北野唯我がナビゲートする(隔月掲載予定)。

北野唯我(以下、北野コース上で障害物の間を飛び回り、ゴールへのタイムを競うドローンレース。仕事や趣味でドローンを飛ばすだけでなく、なぜ競技の世界に挑んだのですか。

白石麻衣(以下、白石最終的にはドローンで撮影がやりたいのですが、レースという目標があるとモチベーションがキープできます。ネットでドローンの最新情報を集めるのは難しくても、レース場に行けば他のレーサーが大勢いるのもメリットです。数年前にFPV(ファースト・パーソン・ビュー:一人称視点)ドローンを知りたくてレースを見に行ったら、米国のトップ女性レーサーが来ていました。成績も上位で「女性でもこんなに活躍できるんだ」と。まだ日本人女性はひとりもいなかったのでチャンスだと思いました。すぐに「やりたい」と手を上げたらメーカーの方が声をかけてくれたんです。ドローンを続けるにはお金もかかるので、まずはレースのほうでスポンサーを募ろうと考えました。

北野:どんな費用がかかるのでしょうか。

白石:大きいのは遠征費ですね。都内ではレースがほぼないので、全国や海外に行きます。いちばんお金がかかるのは機材です。普通の練習でも2機は大破しますから。

北野:えっ、毎回?

白石:はい。全パーツが使えなくなるわけではないものの、内部基盤がダメになったらいきなり1万2000円とか。はんだごてを使って直せるようなら、その場で直します。バッテリーも1個5000円ぐらいで、それがいきなり燃えたりします。

北野:ものづくりの力も必要ですね。

白石:機体の一部をモデリングして3Dプリントしています。私は3Dデザインに慣れていますが、ほかのレーサーは勉強してできるようになりました。自宅に3Dプリンターを備える人がほとんどです。

北野:レースにはどういう職業の方が参加していますか?

白石:ITエンジニアやデザイナー系は多いです。一般の会社員から女子高生、工事現場で働く人、経営者などもいますね。メカに強い電気屋さんもいます。

ゲームの世界が現実になった

北野:そもそも3DのCGデザイナーになったのは。

白石:小さいときからゲームが好きでした。最初はゲームのキャラクターデザインをするイラストレーターになりたかったんです。でも、中学生ぐらいであまり自分は絵がうまくないことに気づいてしまった。それならキャラクターのモデラーになろうと高校生ぐらいで3Dを始めて、その後はCGの専門学校に進みました。社会人になってからは、有名なビッグタイトルのゲームにたくさんかかわっています。

北野:幼少期のゲーム体験から3DCGデザイン、今のドローンパイロット。全部に共通している欲求があるとしたら、何だと思いますか。

白石:私は非日常の世界が好きなんです。旅行好きなのもそうだし、空を飛ぶゲームが好きなのも実際にはないファンタジーの世界に行った気持ちになれるから。そうした空想の世界に没頭するタイプだと思います。だから、現実的なクルマのゲームなどは全然やりませんでした。
ドローンレース用の機体からは5.8Ghz帯の電波を使ってFPVゴーグルに映像が送られる。そのため、 国内での操縦には「アマ チュア無線技士」の免許が求め られる。また、国土交通省はド ローンパイロットの認定資格として22年12月から「無人航空機操縦者技能証明書」の交付を開始。民生ドローンを個人で飛ばすのに免許は不要だが、航空法の定めにより屋外では飛ばせる場所が限られるので注意が必要。

ドローンレース用の機体からは5.8Ghz帯の電波を使ってFPVゴーグルに映像が送られる。そのため、国内での操縦には「アマチュア無線技士」の免許が求められる。また、国土交通省はドローンパイロットの認定資格として22年12月から「無人航空機操縦者技能証明書」の交付を開始。民生ドローンを個人で飛ばすのに免許は不要だが、航空法の定めにより屋外では飛ばせる場所が限られるので注意が必要。

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文=神吉弘邦 写真=桑嶋 維 文=北野唯我(4ページ目コラム)

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年1月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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