テラドローンはその資金を投じて子会社を設立し、現地の石油貯蔵施設のドローン点検を開始する。
サウジアラビアは 現在、経済改革計画「サウジビジョン2030」を掲げ、脱石油依存型経済を目指しているが、次期経済成長の柱であり、雇用創出につながる産業として注目しているのが、このドローンだ。
その計画の一環として、サウジアラムコは世界50社のドローン事業者を選定し、約1年半に及ぶデューデリジェンス(DD=企業調査)を実施してきた。最終的にわずか1社の枠を勝ち取ったのが日本のテラドローンだったのだ。
豊富な石油資源を持ち、政治的には独裁色の強いサウジアラビアとの外交は一筋縄ではいかない難しさがある。昨年7月には米国のジョー・バイデン大統領が石油増産を目的に訪問したものの、確約を得られず「手ぶら」での帰国となった。
そんななかでテラドローンは資金調達にまでこぎつけた。同社のCEOである徳重徹(とくしげ・とおる)は「相当な覚悟を持って交渉に挑んだ」と話す。どのようにサウジアラビア側とコミュニケーションをとり、交渉を成功させたのか。
「明治マインド」でプレゼン
今回のドローン企業選出のプロジェクトは、2021年10月に始まった。選ばれた50社がプレゼンを行い、それを通過した3社がDDに進むという流れだ。テラドローンは、徳重をはじめ、欧州子会社で組織統括を担う29歳と35歳の若手社員がプレゼンにあたった。
しかし、プレゼンの席に座って早々、Wa‘edの投資担当者から浴びせられたのは「最近の日本企業はダメだ。昔は世界で闘える大企業があったが、いまは落ちぶれている」といったダメ出しの言葉だった。
これに対し、徳重は怯まなかった。
「馬鹿にされたら僕もカッとなっちゃって。『こっちはソニーやホンダのような企業をもう1回つくってやろうという気概で事業に臨んできたんだぞ』と言い返したんです。この姿勢がむしろ気に入られて、Wa‘edの担当者がその場に副社長を呼んできました。それでさらに議論が盛り上がりました」