パルクールもこなすスイス製四足歩行ロボット「ANYmal」

スイスの四足歩行ロボット「ANYmal」(ETH Zurich / Fabian Jenelten)

人型ロボットの分野では、Figure、Apptronik、Sanctuary AI、Tesla Optimusなど数多くの企業によって大きな革新が起きているが、別の形態のロボットについてはまだ参入の余地がある。Boston Dynamicsは早くから四足歩行ロボットの分野に参入し、検出・捜索ロボットのSpotを作っている。

スイスのチューリッヒ工科大学(ETH)はANYmalという四足歩行ロボットを開発してきたが、最近になってANYmalはより賢くなり、より高い能力を獲得した。もうスイスの山道をハイキングするだけではない。ANYmalはパルクールができるようになった。

「ANYmalはパルクールを得意としています。パルクールとは、運動能力を駆使して都市環境で障害物をスムーズに乗り越えていくスポーツです」とETHはいう。「ANYmalは、建設現場や災害地によく見られる複雑な地形への対処方法にも長けています」

新たな能力はAIのおかげだが、AIだけではない。

ETHの研究員と博士課程大学院生らは、機械学習技術を使ってANYmalが自己学習できるようにした。これは子どもが試行錯誤で学習するのと同じ方法だ。その結果、ANYmalは障害物に近づくと、内蔵カメラを使って形状を認識し、搭載したニューラルネットワークを応用して障害物を分類し、対応方法を決定する。



さらに、チームは機械学習だけではなく、モデルベース制御を用いた学習もさせている。

両者を組み合わせたアプローチは最善の結果を生んでいる。

「これによって、がれきの山で隙間や穴を認識して通過する方法など、ロボットに正確な動きを教えるのが容易になります。機械学習は、ロボットが動きのパターンを習熟し、予想外の状況下で柔軟に適用するのに役立ちます」とETHはプレスリリースで述べている。

自己学習と教育訓練を組み合わせたこのアプローチが総合的に最善であるかどうかはまだわからない。しかしこの方法は、試行錯誤と教育と訓練が必要な人間が学習する過程を正確にモデル化している。

ANYmalは、同大学のスピンオフ企業で昨年5000万ドル(約75億円)を調達したANYboticsを通じて販売されている。同社はANYmalを、困難で危険な環境のための自立型検査ロボットとして販売されており、光学カメラとサーマルカメラに加えてLiDARも搭載している。10kgの荷物を保持し、追加のセンサーを搭載することが可能で、バッテリーで連続90分間動作する。

競合相手はBoston DynamicsのほかにKNR Systems、Lymxmotion、Moog、 およびUnitreeなどとなる。利用分野は産業、捜索救助、軍事、遠隔医療などだ。

この市場の可能性は未知数であり、Boston Dynamicsは「現在1000台以上のロボットが顧客の手にある」とだけ明らかにしているが、アナリストは今後の10年間で年間最大8.8%伸びると予想している。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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