テクノロジー

2024.03.14 17:15

AIとクリエイターの共存方法 ChatGPT責任者らが語った見方

SXSWで登壇したオープンAIのピーター・デン氏(中央)

公正にクリエイターに分配する仕組みを

AIの学習やAIによるアウトプットの利用について、何かしらのルールを定めなければ、クリエイターの仕事と生活は保護されない。その道筋のヒントが見えたセッションも紹介したい。
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クリエイター支援プラットフォーム「Patreon(パトレオン)」のシニア・ディレクターを務めるローラン・クレンショー氏らが登壇した、AI時代にクリエイター創造性を守る方法をテーマにしたセッションだ。

クリエイター支援プラットフォーム「Patreon」のローラン・クレンショー氏

クリエイター支援プラットフォーム「Patreon」のローラン・クレンショー氏

セッションの中で、クリエイターが抱える課題として、「著作権侵害の懸念につながるAIの進歩」「AIの自動化による潜在的な雇用の置き換え」「AI生成コンテンツが飽和状態となることによる創造的評価の低下リスク」が紹介された。いずれもすでに起きている問題ばかりだ。

これに対処しようと、パトレオンは2023年、3500人を超えるクリエイターに話を聞いたという。その声をもとに、AIの学習を防止するツールの導入、新しいAlに関するポリシー策定と規制の実施を決めた。
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ポイントはクリエイターとともにポリシーを策定した点であり、彼らの懸念をしっかり理解した上でポリシーに反映している。パトレオンにとってはパートナーとなるクリエイターから信頼を獲得でき、また当然彼らを守ることにもつながる。セッションでは、政府がAI関係の法律を策定する際、企業ではなくクリエイターとの共同作業で進めるべきとの提言もあった。パトレオンの話を聞く限り、創造性の保護の意味で大切な視点であろう。

オースティン中心部に掲げられたSXSWのフラッグ

オースティン中心部に掲げられたSXSWのフラッグ

音楽業界を参考に、AIが生成したコンテンツのロイヤルティーを、公正にクリエイターに分配する仕組みを構築すべきとの真っ当な意見も出た。そのためには、生成AIのアウトプットが、どのクリエイターの作品を参考にしているのかを、定量的に評価する技術が求められる。現時点では難しいだろうが、いずれクリアしなければならない問題である。もしうまくいったならば、「透明性」が手に入る。実現しなければ、一部の人々を除いて、クリエイターが本業だけで食べていくことが難しい時代に突入する可能性がある。

「最近仕事が減った」の声 急速な変化の先

様々な機関のレポートで、仕事がAIに置き換えられるとの予測が出されており、最近では職種や割合まで詳細に確認できるようになった。仕事が置き換えられたとしても、その結果別の仕事が生まれる。こうした声はよく聞く。

しかしながら、コンテンツマーケティング業界に身を置く筆者は、新しい仕事が生まれたとしても、特に先進国においてはAIに置き換えられた分を埋めるには至らないのではないかと思えてならない。それほど、生成AIやAIによって、筆者の経営する会社の作業効率は高まった。一方、仕事が減ったというフリーランスのクリエイターの話を直接聞くこともある。米国のプラットフォーマーがレイオフを進める一方で、業績が改善している点も見逃せない。

筆者は基本的にAIが人間の能力を拡張させる点に同意している。暮らしを豊かにもしてくれるだろう。ただし、急速な変化に、クリエイターの経済圏がついていけていない。個性が失われた未来が、目の前にうっすらと見えている。

文・写真=田中森士

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