アート

2024.03.14 16:45

次なる時代を描くヒントは「研究」と「アート」にある? デサイロが初のイベント開催

(左から)岡田弘太郎、和田夏実、木原共

難解な概念を、「遊び」でときほぐす

木原:僕は、普段は「問いを引き出す遊び」をテーマに実験的なゲームやインスタレーションを作っています。今回はコラボレーターとして、社会学者の山田陽子さんと組ませていただきました。
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ここ数年は、「遊びを通してAIと人間の関係性を捉え直す」という取り組みを、制作を通して行なっていたのですが、山田先生の研究内容である「ポスト・ヒューマン時代の感情資本」が思いのほか自分の関心と重なっていて驚きました。

感情資本とは、山田先生が翻訳もしている社会学者のエヴァ・イルーズが提唱したものです。現代は、本来はお金に変えられないはずだった感情が、定量化され交換されはじめている時代です。たとえばマッチングアプリのアルゴリズムは、より良い条件の「恋人」の発見を効率化した結果、恋愛を市場化しています。

一方で、人々の愛着を原資にしたアイドルの推し活ビジネスの発達のように、感情が資本として動員され経済を駆動させる潮流もあります。こうした感情的な行為が経済化していくこと、そして経済行為に感情的なものが混ざっていくことを説明する概念が「感情資本」です。この感情資本を体験できる形に落とし込むべく、制作を進めています。
 
「問いを引き出す遊び」をテーマに、実験的なゲームやインスタレーションを開発してきたメディアアーティストの木原共が「感情資本」をもとに新作を手掛ける。イベント当日は同作の展示に加え、同作を使った体験型のパフォーマンスも披露。
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岡田:木原さんの作品って、自動運転やAIなどの現代的に重要なテーマを「遊び」や「ゲーム」によって、人々が体験的に理解できるように仕上がっていて、いつも驚かされるんです。今回も山田先生のコラボレーターとして木原さんに入ってもらうことで「感情資本」という概念が社会に開かれていくような気がしています。

──研究者とアーティストの組み合わせは、どのように決めたのですか。

岡田:その研究テーマを表現するメディアとして何が適しているのかや、アーティストの方の問題意識と研究テーマが重なり合うかどうかなど、さまざまな観点について検討しながらコラボレーターのみなさんに打診していきました。「この組み合わせなら何か起こりそう」という直感に拠るところもありました。

制作プロセス自体も研究者とアーティストの方の共同研究的なものですし、アーティストの方にとってもこれまでにない取り組みで「プロセス自体も刺激的」と感じてくれている方が多かった印象があります。

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文=松本友也

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